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カルメン故郷に帰るのchisatoのレビュー・感想・評価

カルメン故郷に帰る(1951年製作の映画)
4.0
日本初の総天然色映画ということで、高峰秀子の衣装に力が入っている様子。全体的には、文字通り日本映画の新しい時代を象徴するような色使いと、戦後の明るい未来を祈るような楽観的な話ではあるが、ストリッパーが浅間山の麓で下着で踊り狂うという映像は当時からしたらかなり衝撃的なものだったのでは。作中も「パンパンだよ」と、彼女たちを下に見るような発言もある。「二十四の瞳」で高峰秀子の芸の広さを見たが、ここでも全く違う役をこなし、まさに虹色の才能が生かされている。カルメンの初恋の相手が戦争で失明していたりと、戦争の傷も残る社会を反映している部分もあり、コメディ一色とはいかない奥深いところがある。舞台のシーンの観客の視線を芸術家たちの脚越しに見るシーンのような、いわゆる「男性の視線」的なシーンはあるものの、カルメンたちの開放的に踊る姿や、自信に満ち足りた様子を表す鮮やかな衣装は、今の時代から見てもなんだか心が晴れ晴れするような描かれ方である。また、校長や親も彼女たちが踊ることはせず、それを利用して金儲けを企むものに責任があると認識しているところも、木下監督ならではの繊細な倫理観があるものとみられる。原節子が日本のマレーネ・ディートリヒならば、高峰秀子は日本のジュリー・アンドリュースのよう。
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