ベティー

7月4日に生まれてのベティーのレビュー・感想・評価

7月4日に生まれて(1989年製作の映画)
4.0
ベトナム戦争帰還兵で反戦活動家のロン・コーヴィックの自伝的小節の映画化作品。

とにかく主人公のロンという人物の、のせられやすい愚直な性格に驚いてしまう。あるいみ政府やマスコミの影響力が強い20世紀的トップダウン型情報戦略に人生を翻弄された犠牲者とも考えられるかもしれない。
従軍前は政府にのせられ、帰還後は反戦ムードにのせられ被害者として活躍する様は、とても苦々しい気分になる。
見応えがあったのは、帰還してからの絶望的シーンの数々。特に母親とのやり取りがあまりに救いがなく、障害を追った人間の精神状態を垣間見れる、悲痛な叫びがとてもよい。思うに、この映画は戦争映画というよりむしろ障害をおった人の苦悩の描写の映画としての価値が高い気がする。
苦悩の男を風俗嬢が癒やすシーンの描写とかとてもよい。

いまいちなのが、戦争映画というか、社会的映画として考えると、この映画をみたところで、共産主義憎しの若者が反戦活動家になるその真意というか、思考のロジックのようなものがよくわからないところ。
ベトナム戦争が共産主義の拡大を防ぐための勢力争いの軍事介入だってことくらいはわかってそうなもんだろうし、悲惨な戦争体験イコール反戦活動家にはならないと思うんだけどな。
まあばかみたいですが、戦争って殺しに行くってことですからね。当然殺されることもあるし、半殺し(半身不随)の目にあうわけで、それはわかってるはず。だから反戦の動機にはなりえないとは思うんだけど、そのあたりの思考の変化がなんにも描かれてないので、ただ周囲に影響されやすい人にしかみえなかった。
と書いては見たが、入隊時は高校卒業くらいだったわけだからこんな考え方自体フェアじゃない気がしてきた。。まあフェアなんていってたら兵隊は集まらないか。でもなんとなく物事の本質を深く考えないタイプの人なのなって印象は最後までそのままだったが。

従軍前にロンの友達がいったセリフ、「よく考えろ、ただ俺はよく考えろっていいたいだけだ」、、みたいなのが一番印象に残りましたね。とにかく彼に必要なのは最後までよくかんがえることだと思いましたが、、まあこれは私にも共通する点なのでとても同情してしまうのですが。。よく考えないからこそこの主人公、あのラストなのかなって気がしました。
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