スギノイチ

競輪上人行状記のスギノイチのレビュー・感想・評価

競輪上人行状記(1963年製作の映画)
4.5
今村昌平が脚本を担当しているだけあってえげつない。
父親の子を孕む娘。犬の葬式で稼ぐ寺。犬の肉を食わせる飲み屋。マゾ兄嫁。息子の嫁を抱くじじい坊主…
しかし、間違いなく今村昌平臭はするものの、やはりどこかが違う。

主人公は小沢昭一演じる中学教師で、父親から日常的な強姦を受けた挙句に孕んでしまった生徒を引き取って、面倒を見ている。
世間知らずの主人公にとっては自分と無縁の「貧しさ」の象徴であり、庇護の対象でしかない弱く純粋な少女だ。
こういう、ある種ロマンチックな存在は今村映画にはいないかもしれない。
さらに、兄が死んだ事で寺を立て直す必要もあって生活は苦しくなり、やがて主人公は競輪に嵌まっていく。

「競輪上人」がギャンブル狂達を相手に講釈を垂れるシーンは馬鹿馬鹿しいのに泣けてくる。
そしてその横には、あの少女が常に付き添っている。
何度父親に犯され、孕まされていたとしても、主人公にとっては「純粋」な存在なのだ。
まさしく「地獄めぐり」を経た競輪上人の終着の情景。
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