柴又慕情

悪い男の柴又慕情のレビュー・感想・評価

悪い男(2001年製作の映画)
3.8
筋の運びにはところどころ明らかな飛躍が見られるが、かといってそういう飛躍を埋めるような精緻な描写を下手に挿入してしまえば、おそらくこの映画の独特の気品は殺がれてしまうだろう。だから私たちはつまらない構成的な不備をあげつらう前に、この映画の強引なまでの「荒っぽさ」を、キム・ギドク監督の美学としていったん受け止める必要がある。それにしても、悪徳と純愛といういっけん食い合わせの悪いこのふたつの主題が力技でむすびつけられるその手腕に、私たちはふしぎな清々しさを感じはしないだろうか。それはおそらく、ヤクザと娼婦といった肉体性の極致のようなキャラクターを双極に配置することによって、かえって精神的で純粋な交感を浮き彫りにすることに成功しているためであろう。