たてぃ

白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々のたてぃのレビュー・感想・評価

4.4
「沈黙=共犯」を痛感させられた作品でした。

ナチス政権下の1943年2月、ミュンヘンで反政府運動をした疑いで逮捕された21歳の女子大学生、ゾフィーの物語。見どころは、ゲシュタポの取調官との論戦、そして裁判での応戦。

「良心に従って生きる」ことを最後まで貫く姿が美しかった…いくらでも言い逃れして生き延びることが出来るのに「仲間を裏切ることは出来ない」「信念を曲げたくない」と拒否する姿。

それで、冒頭の「沈黙=共犯」。ナチス関連の作品を観てきて「当時のドイツ国民はなぜナチス政府に対して沈黙していたか」の問いに対して、この作品を観るまでは「政府批判をすれば逮捕されるから」だと思ってた。確かにそうかもしれない。しかし、当作品中でのゲシュタボの取調官が言ったフレーズで…「政府のおかげで大学まで行かせてもらって食料の配給券までもられるのに何が不満なんだ?」で考えさせられた…

当時のナチス政権は社会主義で「政府を批判しなければ、仕事も与えられるし食いっぱぐれることはない」という時代…つまり、「沈黙=(生活の)安定」なんだと…第一次世界大戦の敗戦で多額の賠償金を請求されて経済は困窮し、ハイパーインフレや高い失業率、そして世界恐慌を経験したドイツ国民。そんな国民が生活の安定を求めたのかと…その結果、沈黙と…

しかし、「沈黙=安定」の時代は長く続かず、やがて高い代償を払わされることになる。多くの戦死者、西から連合軍による大規模な空爆、東からソ連赤軍による蛮行(何百万もの女性が被害に…)。つまり、「沈黙=安定」から「沈黙=共犯」へと変わっていった…

出演者の演技も鬼気迫るものがあったのも見どころでした。
たてぃ

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