このレビューはネタバレを含みます
冒頭の官能的なボイスオーバーから、”汚い”という生々しい蘇州河の映像の時点で傑作認定。
”撮影屋”の持つカメラが蘇州河近辺の猥雑で淫靡な情景を捉える。
一目惚れした”人魚”のメイメイとの恋愛話と、彼女が語る謎めいた話が入り混じる構成。
代わって撮影屋が語る、マーダーとムーダンの話は妄想。
つまり真偽と詳細が不明なメイメイが物語る話を、撮影屋が肉付けしている。
ただ、終盤に入ると、彼もこの物語に入れ込み過ぎて現実と妄想を混同してしまう。
この筆致は後のロウ・イエ作品に続くもので、生々しいリアリズムと幻想的な演出が混在した独自の作風はここで既に萌芽している。
冷凍庫で冷やしたズブロッカも美味いが、それにもまして酔える作品。