「アカデミー賞主要4部門受賞」と言うと、どれだけ重厚で壮大な作品なのかと思ったら、とても軽くて心地良い温度感の作品だった。
2023年でいうところの「蛙化現象」がテーマの作品で、冒頭のウディアレンのセリフ「私を会員にするようなクラブに入りたくない」という言葉が意味する通りのストーリーが展開される。
小ネタ程度の扱いだけど、のちの映画「クラッシュ」に通じる性癖をもったアニーの兄もとても良かった。
ウディアレン演じるアルビー・シンガーはニューヨークへの偏愛など、全編にわたって彼の偏見や屁理屈からくる謎のこだわりについて延々と話し続ける。そして、ふとした拍子に画面正面を向いて観客に語りかけ、その意見をゴリ押してくる。いつも死への強迫観念があって人生は悲惨だと思ってる偏屈中年と、現実で仲良くしたくはないけど、さすが漫談家だけあってジョークが面白いのが良いバランスだった。逆に、アニーホールは好きだなーと思う反面、深く付き合うと大変そうな、ちょうどいい按配のキャラクター像だった。
字幕は延々と繰り出されるセリフ量から追うのが大変だったけど、かなりクセのあるセリフ回しを日本語で違和感のないようによく表現できていたと思う。