囚人13号

キッスで殺せ!の囚人13号のレビュー・感想・評価

キッスで殺せ!(1955年製作の映画)
4.5
パワープレイ炸裂。
拷問の直接的な描写や、とにかく殴るマイク・ハマーは従来のもどかしい探偵映画を皮肉っているとしか思えないし、女と無意味な会話を重ねたり、ほぼ足元しか見せない大ボスの姿はこれまでに撮られてきた不特定多数のフィルム・ノワールへの完璧な目配せ。

欠点は二項、撮られた時期が十年早かった事と核心がマニアックすぎる点に尽きる。
肝が核実験である事とノワール(スリラー)においてはあまりに不親切な脚本、しかもそこすら曖昧にしてしまっているために現代人のほとんどは解説がないと理解出来ないはず。

右翼でありながらマッカーシーを敵に回した原作者を全無視し、唐突に19世紀生まれの詩人の作品を重要なキーポイントとして提示する出鱈目ぶり。
そしてこの映画を理解できないのは無知なあなた方の責任ですよと言わんばかりに最後まで太々しい作風を崩さないのでやはり人を選ぶ映画と言わざるをえないし、国内で散々だったという興行成績もそりゃそうだよなと思う。

しかしどうしても個人的には凄まじいエネルギーに満ちた大傑作としか思えないが…。尚、アルドリッチによると本はクソだという。
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