syuri

うつせみのsyuriのレビュー・感想・評価

うつせみ(2004年製作の映画)
4.1
無敵というか武者というか相変わらずの世界観!!
キム・ギドクの頭の中というか妄想というかやっぱり常人には計り知れない感性が映画の中で躍動し飽和してます

主役二人は一言も台詞がない…

テソクは民家に空き巣に入り、まるで我が家の様に暮らす生活を転々としていた。普通に食事をしたり、風呂に入ったりして形跡を残さず去っていく。一軒の留守宅に入った先で顔中あざだらけの美しい女ソンファに出逢う。彼女は旦那にの殴られ抜け殻の様に暮らしてる…

現実と幻が共存し、幻は幻覚ではなく抜け殻であり「現身(うつせみ)」で幻のようだけど確かな存在で実在であり現実

不思議な空間の中で静かに進む空気感をただ感じれとても心地よく繊細で穏やかな映画。美しい世界観

孤独感を抱え人の生活を感じるため空き巣を繰り返すテソク、抜け殻・・・現実の人間に寄り添うように空蝉のように生きるもう1人の空蝉のように生きる女ソナ・・・・

孤独感を抱える者同士にしかわからない心の内で言葉は交わさなくとも、お互いの心が通じ当然のように惹かれあう

「うつせみ(空き家)」。「うつせみ」「空蝉」、蝉の抜け殻当て字で「現身」とも読みます。抜け殻のようだけど、現在に生きてる儚い人間。そんな二人の物語

この二人の物語はキム・ギドクにより丹念に推敲され最高に美しいラストカットにつながっていきます

今回は心の内である業を描き続けるキム・ギドクの作品の中でも重さや辛さを出さず美しさと優雅さをメインに演出しています。今作は猛毒ではなく甘い毒を吐くので彼の世界観が苦手な方でもうまく見られると思います。

公開中のメビウス同様主人公は台詞がないパターンだがこっちのベクトルは純恋愛に傾いている演出方法は似てて対照的で好みが別れるところだけど個人的にはメビウスより好きかも

第61回ヴェネツィア国際映画祭 銀獅子賞(監督賞)2等賞
syuri

syuri