似太郎

恐怖分子の似太郎のレビュー・感想・評価

恐怖分子(1986年製作の映画)
4.6
【FAKE 📸】

「女の子を映した数枚の写真」がまるでジグソーパズルを当て嵌めるような映画的仕掛けとなっている迷宮に彷徨った台湾ニューウェーブ作品。

エドワード・ヤンらしく群集劇のスタイルを用いている。登場人物がやたらと多い。不穏な都市の造形、高層マンション、電話、テロルなど現代の悪夢的情景が印象に残る。

また主人公の青年が撮った写真(風景)の一つ一つが「嘘=FAKE」で出来ている辺りが肝でもある。ここだけ『ヤンヤン・夏の想い出』の大量に撮られた人間の背中の写真を想起させる。

前作『台北ストーリー』同様に内容が暗く、ほとんど『クーリンチェ少年殺人事件』とは関係がない。ミケランジェロ・アントニオーニの問題作『欲望』と同じく「そこにあるはずのものが実はない」といった抽象的モチーフのある作品。

やはり本作に於いてもテロリストの親玉のハーフの女の子がこの監督らしく「悪女=ファム・ファタル」を形成している辺りが特徴でもある。ラストで自害する中産階級のオジサンが哀れとしか言いようがない。

やはりこの世は嘘=FAKE で出来ている❓
似太郎

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