ヨヨ

恐怖分子のヨヨのネタバレレビュー・内容・結末

恐怖分子(1986年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

エドワード・ヤンは人の顔と名前を覚えられぬ者に厳しい

多くのシーンは、いくつかの印象的な部屋の中で展開する。部屋には外からの光と風が入ったり、扇風機が単調に空気を回していたり、または息の詰まるような密室だったりする。カメラ男子の暗室も大変ヤバかったが、ここではあの夫婦の部屋について。

夫婦の部屋には、これでもかと“文化”が飾ってあった。絵、壺、面、人形...どっちが買ったんだろう。書斎にもあるし、妻?
強迫的なほどの密度で、それも無節操に飾られているように感じたが、台湾ブルジョワ的には普通なのかもしれない(知らない)ので強くは言えない。
夫は小説を読まないし、本の積み方ひとつからも、全く書斎になじまない人間なのだという感じだ。書斎は妻ひとりのために用意された、風の吹かない密室で、ここで彼女は密かに窒息していった。

自分が彼女には不釣合いではないか、という負い目を当初から感じていた夫は、妻の領域にタッチすることを避けていた。邪魔せず、妻の思うように暮らさせてやる、というのが彼の大義で尊厳だが、妻の心が既に離れつつあることを感じていて、決定的破綻を恐れていたようにも思う。
この日常をこれまでなんとか続けてこられたこと自体、彼にとっては既に大きな達成だった。が、彼女にとっては全く違った。
ヨヨ

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