柚子

レナードの朝の柚子のレビュー・感想・評価

レナードの朝(1990年製作の映画)
4.3
原因不明の不治の病から目を覚ますのがやけに早く感じ、拍子抜けしたような印象もありつつ、残りの時間どのような展開になるのかと期待に胸を躍らせ観ていたけど…

名作と言われる映画にはそれだけの理由があるなとつくづく実感した。

朝目覚めて朝日の光を浴び小鳥のさえずりを聴くこと、誰かと会話できること、自分が好きだと思う物事に没頭できること、ご飯を美味しいと思うこと、「また明日」があること、明日の朝を楽しみに眠りにつくこと…
どれだけ幸福であるかなんて考えたことすらもなかった。

失われた数十年を取り戻すかのように人生を謳歌する彼らの姿が本当に愛おしかった。
老いて変わり果てた自分の姿を鏡で見ても悲観的になることなく「お化粧しなくちゃ!」「髪を染めなきゃ」とおめかししたり、魅力的な異性に目を奪われて恋をしたり、心は若々しくてアグレッシブ。
でもレナードの場合、体は大人でも心は少年当時のままなため、誘い方が少しぎこちなくて可愛かった。

だんだん薬を投与しても体が言うことを聞かなくなる過程が見ていてとても切なかった。
成功の裏側にはしばしば代償はつきもので、彼らは再び眠ってしまったけれどその代わりに生きることの喜びを教えてくれた。

彼らを蝕んだ病気、惰眠生脳炎は調べたところ当時流行していたようで近年は見られないのだそう。
だけど、再び流行し、自分の愛する家族や大切な友人がかかってしまったとして、現在もなお原因や完治方法が見つかっていなかったとしたらあの薬は投与するか…?
ひと時だけでも奇跡を起こすべきなのか?
命というものや生きるということについて、色んなことを考えさせられました。
柚子

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