tsuyoshi

ロスト・イン・トランスレーションのtsuyoshiのレビュー・感想・評価

4.3
ネオン街が美しく映える、一昔前の東京。
この映画で描かれる東京は東京であって、我々が知っている東京とは少し違うような感じもする。
人で溢れかえっているはずなのに、どこか孤独と疎外感が見え隠れしている大都会。
そんな異国の地で、出会ったアメリカ人の若い女性と中年の男性が惹かれあっていく様を描く。
僕らにとっては当たり前だが、彼らにとっては奇妙に映る文化の違いや、言語の問題などが面白おかしく表現されているのも興味深い。
精神的な孤独と、肉体的な孤独。
二人は徐々に満たされ、居場所を見つけ出していく。しかし訪れる別れの時。
雑踏の中、立ち尽くし、優しく抱きしめ合う。
最後に彼が、何を呟いた。
我々には何も聞こえないが、憂いを帯びた彼女の表情が嬉しそうに変わったことだけは分かった。
観るものに答えを委ね、東京のネオンの淡い色に包まれて終わるラストシーン。
水面に一滴の滴が落ちたかのように、心に静かに広がっていくような美しい余韻に酔いしれる。
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