Uえい

ロスト・イン・トランスレーションのUえいのレビュー・感想・評価

4.1
少し前に映画館でやっていた時に見に行けず配信で視聴。こんな傑作を劇場で見てしまったら席から立てなくなってしまう!

ソフィア・コッポラ監督の作品という前知識しかなかったが、主演がビル・マーレイとスカーレット・ヨハンソンで驚いた。特にスカヨハはクールでカッコいいイメージが強かったが、今作では可愛くてチャーミングな姿が印象的だった。

アメリカのベテラン俳優ボブはサントリーのウィスキーのCM撮影の為に東京に来ていた。しかし、通訳が入っても上手くコミュニケーションが取れなかったりなど不満が重なり早く帰国したいと考える様になってしまう。

一方、夫の仕事に同伴して東京に来たシャーロットは、日中一人で過ごす事が多く、将来の不安も重なり虚しさを抱えていた。

同じホテルに宿泊していた二人は、ひょんなことから仲良くなり、寿司やカラオケなど東京の街を楽しむ様になる。

思いがけず、外国から見た日本という点で直近で見た「PERFECT DAYS」と共通していた。本作は2003年の作品なので、今見ると少し懐かしさも感じられる点が良かった。「PERFECT DAYS」も20年後に見たらまた違って見えるんだろうか。

ビルが日本人と話す際、通訳を入れても意訳され、上手くコミュニケーションできない様がコメディのようで面白かった。日本語が分かるからそう見えているのかも知れない。

そんな東京に馴染めないビルとシャーロットの関係が繊細に描かれていて素晴らしかった。徐々に、東京で馴染めないのは比喩的な要素があり、妻・夫との関係や、将来への不安、ミドルエイジクライシスなど複雑な原因で根無草の様な感覚に陥っている事が分かってくる。

二人は同じホテルにいて、上手く馴染めないでいるという共通点から親しくなり、お互いに居心地の良さや、恋心の様なものを感じていく。そして、近づこうとするほど、相手を通して自分の不安が顔を出し、離れてしまう。そして、東京を離れるという一番大きな負の力が働いた時、二人が秋葉原で抱き合う。これは感動するしかない。
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