りょーすけ

ロスト・イン・トランスレーションのりょーすけのレビュー・感想・評価

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ロスト・イン・トランスレーション


この作品は2004年のアカデミー賞で、作品賞、監督賞、主演男優賞、オリジナル脚本賞の主要4部門にノミネートされ、アカデミー賞脚本賞を受賞した。
東京を舞台に孤独な男女の恋愛を描くソフィア・コッポラの監督作として有名で、スカーレット・ヨハンソンの出世作でもある。
数年間東京でファッションや写真を学んだ経験のあるソフィア・コッポラ監督。1999年、ヴァージン・スーサイズが初監督作品で、プロモーションで来日したときに滞在したパークハイアットを「世界で一番好きな場所」と言うほど気に入ったそうだ。そしてこの作品に作ろうと思ったそうだ。
監督が気に入った今回のメインとなる舞台はパークハイアット東京。
今では外資系ラグジュアリーホテルが東京にはいくつもある。
しかし、どのラグジュアリーホテルよりも前にオープンして、その後の東京・ラグジュアリーホテルカルチャーが産まれる源流になったのがこのパークハイアット東京である。

CM撮影のボブが戸惑うシーンでは監督に日本語で指示されてビル・マーレイさん自身も監督が何を言っているのか事前に教えなかったそうだ。これはビルの混乱した演技をよりリアルにするためだったと言う。
ボブとシャーロットが寿司屋で食事をとるシーンの台本には「彼は彼女を笑わせる」としか書かれていなくて、ビル・マーレイさんはアドリブでの演技だった。
この撮影でビル・マーレイさんがモデルにしたのはハリソン・フォードさん。その当時の東京ではビールの広告を務めていたハリソン・フォードさんの看板が所狭しにあったからだと言う。
ボブが撮影するサントリーウイスキーのCMのシーンは監督の父親、フランシス・フォードさんがサンフランシスコの自宅で撮影したサントリーウイスキーのCMを元にしている。黒澤明さんも共演しているのに気がついた。
ラストシーンである、ボブがシャーロットとの別れ際に彼女の耳元で何かを囁くシーンではコッポラ監督は台本に「寂しくなるよ」というセリフを書いたというが、ビル・マーレイさんが実際に何と囁いたのかは分からないそうで、誰にも言わないと公言している。
役を生きるというのはこういう事なのかと勉強になった次第である。
映画の撮影後、パークハイアット東京のバーには「L.I.T.」という名前のカクテルができたというのを知って、20歳になったら私も行こうと思う。
日本人はLとRの発音が苦手で、ホテルでのシーンで女性に「リップ」と言われていたが、RIPなのかLIPなのか伝わらない事があるということを知った。
これを踏まえて日本人とアメリカ人の間でも間違ったトランスレーションが起きていることを知った。これは普段の日常生活での思い違いなどにも現れているなと思った。

東京には二つの顔があり、一つは普段、何気なく生活している人々が感じる日常生活としての場所。もう一つは、日本と中心となるメディアとしての東京である。ここをギラギラしている新宿の街のホテルという所で上手く表現していたと思う。
日本人同士でも意思疎通が出来ない時が多少あるのにもかかわらず、見知らぬ場所に行った時には、さらにこういったすれ違いが起きると思った。思い違いで失うというのはすごく虚しい事なので、相手を想う気持ちをこれから磨いていきたいと思った。
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