似太郎

切腹の似太郎のレビュー・感想・評価

切腹(1962年製作の映画)
3.9
🏯巨匠・小林正樹監督、橋本忍脚本による大残酷時代劇。後半の畳みかけるような殺陣シークエンスはたしかに凄い。ギョロ目の仲代達矢、怪演。封建社会の理不尽さが容赦なく描出されている。

🏯このサイトでの高評価&大絶賛ぶりに期待してワクワクしながら観たけど、自分としてはこの監督(というか脚本家?)による鬱陶しい程の武士道に対するアンチテーゼが何やら直接的過ぎてあまりセンスを感じなかった。いくらカンヌで賞を獲ったからといって手放しで褒める気にはなれない。冒頭の切腹シーンで何となくオチが読めてしまう。

🏯演出そのものが硬い上、あからさまな権力構造を批判した図式性丸出しなシナリオといいどこか古めかしい印象を覚える。これならまだ黒澤明作品の方がエンタメとして振り切れてる分、マシと思う。映画全体が愚直過ぎるがゆえ…乗れない。橋本忍の脚本の完成度の高さに頼ってるからか何なのか、知らないけども?。

🏯本作がたしかに優れた映画であることは十分認める。唯一欠点があるとしたら、何から何まで過不足なく出来過ぎているという点。映画的なケレン味、遊び心はほぼ皆無。小林正樹と橋本忍が志向する「ギリシャ悲劇的」な構成が少々クドく思われる作品。まあ、好みの問題でしょうが…。
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