切腹の作品情報・感想・評価

「切腹」に投稿された感想・評価

小林正樹の映画はこれが二本目。
この映画も面白かった。
序盤、石濱朗に訪れる悲劇の描写が素晴らしい。
ちょっとしたウェルメイド感を醸し出しながら事は進み、最後には目を覆いたくなるような悲劇。
特に「自分の重みで刺す」あのシーンはちょっと正視できないくらい素晴らしかった。

中盤以降は仲代達矢の語りから、彼の素性が解き明かされていくのだけれど、この構造もいい。
序盤は三国連太郎が石濱の最期を語り、中盤以降は仲代がその視点から物語を語る。状況の緊張感はそのままに、観ている人間に情報が入ってくる、見える画面が変わってくる。この情報と状況のアンサンブルが非常に気持ちがいい。
筋立てとしては割と地味は話だと思うが、この時系列の入れ替えと回想の使い方でかなりエンターテイメント性の高い脚本になっているから橋本忍は偉い。
台詞は相当現代的。
武士という設定をこんなに見事に料理した脚本はほかにないと思う。切腹、武士の誇り、士官。私たちの世代にもなんとなくわかるそれらの設定、美学と言い換えてもいいかもしれないけれど、それを上手く使っていて。それでいて台詞が現代的なので、妙に心に突き刺さるのだ。
武士の時代を経た私たちの心に武士の時代の美学を喚起させる。

画面の格好良さは相当なもので、特に、折々に映される井伊家屋敷外観のみっちりとした威圧感は権威性とその強力さを一目で感じさせるし、仲代
宅のライティングもすばらしい。余白なく意図が敷き詰められているような画面の連続でクラクラしてくる。

役者も非常に良くって。主役級はもちろんだが、ちょい役の稲葉義男とか小林昭二とか松村達雄とか。ちょっとクセのある役者をワンポイントでトントンと使っていくところも楽しい。

すごくいい映画だと思う。誰に勧めたらいいかわかんないけど、勧めたくなる映画だ。
海杜

海杜の感想・評価

2.7
前半もとても面白いってみんな言ってるほど面白くなかった。
話が全然入ってこなくて、観終わった後ウィキペディア見て、あーなるほどなぁって感じ。

でも後半の殺陣は凄かったです。タイマンの殺陣はほんとに真剣使ってたらしいですね。一個間違えたらほんとに死んじゃうじゃん!

ともかく仲代達矢さんの目力が凄かった。
こっちが動けなくなる程の気迫は仲代達矢さんの右に出る者はいないと思う。
仲代さん当時29歳。どんだけ貫禄あるんだよ。
切る切る詐欺。昔はそんな詐欺があったんですね。あまりにも最近多いんでそれの対策として、じゃあ切りなよお腹。場所貸してあげるよ、と武士に二言はない事を利用して切腹させてしまいましょう竹光で。竹光で?!とまぁだいたいこんな話。
描きたいことは山ほどあるんだけど文才の限界と眠気が凄いので諦めます。

「怪談」も見よう。そしてますます見たい「幻の湖」。
小林正樹監督作品。

主演は仲代達也。
「怪談」を観て以来、この監督の映画をいろいろと観たかったんですが、以前はなかなかレンタルに置いてなかったんですよね。
今回は近所のTSUTAYAの昭和キネマ横丁コーナーに新しく入荷していたのを見つけ、さっそく借りてきました。
これは噂に違わぬ傑作…ミステリー要素もあり、武士について皮肉った部分も胸を突き刺します。
ラストの殺陣も凄まじい迫力ですが、ここに至るまでの過程が素晴らしく、オチも公文書改竄で揺れている現代の役人や政治家さん達にも是非見ていただきたいような内容で、〆として完璧でした。
この映画、仲代達也の渾身の演技はもちろんのこと、橋本忍による脚本もとてもよく、全体を通しての絶妙な構成や丁寧な時代考証などなど説得力十分の傑作といえるでしょう。
この作品を観て、改めて他の小林正樹監督作品も観てみたくなりましたね。

未見の方は是非っ!

このレビューはネタバレを含みます

良い!
時代劇に見せかけて、当時の武家社会の陰湿さと見得の世界に絡めたサスペンスミステリーだった。
初っぱなに起こった一つの事件、謎の人物の登場、語りによってその謎を解き明かしていく。ある意味、倒述系。
しかも、主人公は誰も救うことができず、誰かの心を動かすことも、社会の仕組みを変えることもできず、制度に乗っ取って始末をつけた藩の名はますます上がってしまうというなんとも後味の悪いラスト。
役者の演技の熱量といい、たまらんかった。
武士道の虚飾をあばく時代劇。これはすごい……。
静動のリズム、抑圧と解放、端正なシナリオにカットワーク、何をとっても美しい。

近年、「武士らしく切腹がしたい。庭を貸してくれ」とせがむ浪人が増えているという。しかし、実はそれはゆすりの手法なのであった。
その頃同じようにして切腹を申し出る浪人が一人。対処に困った井伊家家老は、金を与えるのではなく、本当に切腹をさせようと考える。
浪人は「介錯する武士を選ばせてくれ」と言うが、次々挙がる名、みな病気で欠席しているという……。
何か知っている様子の浪人は、そこで生い立ちを語り始める。

後半までは話が淡々と進むが、こらえにこらえた抑圧からの解放によって幕を落とす終盤、まさに切腹そのものの体現ではないですか。神懸かり的。
あ

あの感想・評価

5.0
この頃の邦画のレベル高すぎて感動する…
ここまで皮肉と風刺が見事な時代劇とは!

冒頭30分で掴みは完璧!ちょっっと難しい単語が並ぶけど、とりあえず切腹したいんやなこいつってだけで充分。
後半の展開は知らずに鑑賞した方が楽しめる。

この時代、黒澤だけじゃないのはわかってるけど、ほんとに文句の付け所がなかった。仲代達矢の、単調で少し間延びした口調による語りが癖になる。「ほ ほう」

身の上話は、少し前の勇ましい半四郎の武士時代から始まる。それからその辺の良いお父さんのように家族思いの浪人。
同じ人間がここまで変わる様を巧く演じ分けているのも凄いし、まぁなにより無気力さの中に秘める暗い何かを感じさせる現在が見事!そしてそれらを爆発させる最後の畳み掛け方、見栄きりのようにかっこいい仲代達矢がみれる!似合うなぁ勇ましすぎる。実際知らないけど本物の侍にしかみえん。
なのに!半四郎は終盤、武士という飾りを自らそぎ落としてうわべだけだと言ってのける。皮肉真骨頂。


現在では屋敷内しか描写されず、屋敷という左右対称の構図を様々な角度から撮ることによって差し迫る緊張感に拍車をかける。切腹シーンも息を呑むような描写、全編一時も目を離せない!

最後、半四郎と彦九郎の決闘シーンにあまり魅力を感じなかったのが唯一残念なところ。まぁそれも他が素晴らしすぎただけで充分すぎるくらいなんだけど。
シズヲ

シズヲの感想・評価

4.8

このレビューはネタバレを含みます

武士道に対する圧倒的なまでのアンチテーゼを叩きつけてくる傑作。戦の世が終わった武士達の末路が痛ましい程に描かれる。全てを失った浪人の怒りと絶望が壮絶に破裂し、最後はその慟哭すらも上辺だけの武士道によって徹底的に踏みにじられる。変わりゆく時代の流れ、そして武家社会の欺瞞によって齎された悲劇がここにある。余りにも陰惨なのに、見終わった後の満足感が凄い。

淡々としながらも重厚に描写される悲劇がとにかく印象深い。序盤の千々岩求女による壮絶な切腹劇からして凄い。社会問題となっていた浪人の強請を断ち切るべく、徹底して陰湿に追い詰めていく「空気」を自然に作り出してしまった惨さに震える。その一件が津雲半四郎の語る身の上話と次第に結び付いていき、ただでさえ悲惨だった出来事が「救いようのない惨劇」として更に押し上げられていく構成に唸るばかり。終盤の殺陣も迫力満点で、それまで物静かなシーンが多かっただけに尚更映える。そして最後は欺瞞だらけの武士道が世間から称賛されるという結末を迎える。実に残酷で、それ故に強烈な余韻を叩きつけられる。

どうしようもない絶望を抱えた浪人を演じる仲代達矢がとにかく素晴らしい。誇りも家族も何もかも失ったことによる圧倒的な虚無感、武士道に対する静かな怒りが滲み出る演技に感嘆するばかり。丹波哲郎と繰り広げた決闘シーンの緊迫感も堪らない。上辺の武士道を貫いてしまった三國連太郎の冷淡な存在感も秀逸。
物語の語り口のシンプルさと上手さ。
美術や殺陣の美しさ。
皮肉と風刺に満ちたシナリオ。
静的なもの、動的なものを絡めた演技の応酬。

ちょっと待って、整理させて。
っていうぐらいに文句の付け所が見つからなかった。
食い入る様に観てしまった。

どんどん重みを増してくるストーリーに俳優達も乗っていく。

津雲半四郎の空っぽの目が
最強に不気味。序盤から活力を欠いているのにどこか迫力を秘めた陰のオーラが漂う表情がもう凄い。


内容も心に響いたけど、こんな素晴らしい映画が日本にあるということ自体にもまた感動を覚えました。
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