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水の中のナイフの親友のレビュー・感想・評価

水の中のナイフ(1962年製作の映画)
2.5
若者をヨットに乗せた理由は自己顕示欲というよりかはシンパシーを感じたからだと思った。
鍋つかみやナイフゲームではお互いに折れない狂気じみた頑固さ。
満面の笑みでトントンする若者とそれに顔色一つ変えないオッサンはどっちもただものじゃない。
若者の生意気な言動は目上に舐められないための彼なりの処世術かそれともただの嫉妬か。
オッサンの傲慢な態度は若者の幼い言動に若い頃の自分を重ねた自己嫌悪や教育のようにも見える。
唐突に当たりが強くなったのはそこに嫉妬が加わったからなのか。
知識でも力でも勝てない傲慢な大人の振る舞いに教養のない若者のなすすべがない惨めさが辛い。

馬脚を現したオッサンへの女性の内心は歌が全てを物語ってた。
彼女が惹かれたのは保守的ではなく挑戦的だった頃の若き日のオッサンなんだろう。
若者と寝たのはそのせいなのか理屈なんてないのか。
最後に「ある船員」の話をするも結局なあなあに終わる。
けれど「左折」を選んだことに疑う余地はない。

『水の中のナイフ』というタイトルは若者の惨めさを表してると思った。
不穏な劇伴は物語の核心をついてた気がする。
似た者同士で美化されてない若者が皮肉かつリアルでポランスキーのアイデンティティーを感じた。
だからこそ不愉快で拠り所がなく地味さも相まって面白みはない。
けれどその懐の深さに最後まで見れてしまうのは流石の手腕と言うべきか。
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