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東京ゴッドファーザーズのdendohのレビュー・感想・評価

東京ゴッドファーザーズ(2003年製作の映画)
3.7
パプリカを劇場で鑑賞して早十○年、この作品鑑賞をもって今敏監督作品をコンプリートしました。

今敏作品としては珍しく『空想と現実』が混濁する描写がなく(メタファーレベルではあるらしいが、屁理屈では(笑)と思う)、平沢進が関与していない(EDは流石に平沢だと思ったら、ムーンライダーズだった!)。
ストーリーは人情もの、演出はコメディ寄りで『子供が観れる今敏作品』としては第一位でしょう。『天使にラブソングを』『ホーム・アローン』等とともに、クリスマス前後によく放送される映画なのも納得がいく。

特にミユキについては、いつもの今作品の女性キャラの顔でありながら、赤面/破顔/怒りと様々な戯画的表情を繰り出すため、めちゃくちゃ新鮮だった(ギンみたいなコミカルなオッサンキャラは、今作品では定番なんだけどね)。一見王道作品だが、平沢作品としては逆に特異性が強くなっている。

本作におけるホームレスは、建築物としての『家』だけではなく、『家庭』を無くした三人として描かれ、疑似家族として共同生活を送っている。
しかしながら、2023年から観ると、どうしてもホームレス描写が古くさい。段ボールハウスなんて都内の公園からはすっかり排除されたし、一億総貧困時代のホームレスの悲壮感はこの時代とは比較にならない。2020年代に貧困層を主役にすると、万引家族/パラサイト/ジョーカーみたいな、悲惨な内容になる(笑) ホームレスを主役としたコメディがファンタジーとして時代だったのだなと思うとなかなか感慨深いし、絶望もしますわ。
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