津軽系こけし

東京ゴッドファーザーズの津軽系こけしのレビュー・感想・評価

東京ゴッドファーザーズ(2003年製作の映画)
5.0
この映画の暗闇が僕は好き


🌇今敏監督作品
🌇主演3人俳優声優
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私の人生の殿堂入り映画

『パプリカ』や『パーフェクトブルー』よりも断然こっち

15回目の再鑑賞で、そういえばフィルマークスに載せたことなかったなっていう気づき。
訳ありのホームレス3人組が、ゴミの山から赤ん坊を拾い、その母親を探すため東京中をだらだらと巡る。だんだんと3人の過去も浮き彫りになり、それぞれが向き合うべき過去にも対峙してゆく

母親探しの最中に出会う人々が人情厚く、移民の母親や、風車じいさん、オカマバーのママと個性豊かで、綿々と展開する物語を飽きさせない。

描写の細かさも好き。

ホームレス3人組が電車に乗った時、3人の臭さに鼻を曲げる乗客の姿が描かれる。一方、彼らがホームレスということに気づかずにフラットな人間として接してる。なぜ?と思うが、後の細かな所作で親分の鼻が詰まっていることがわかる。

次にヤクザの親分に連れられてきた宴会のシーン。親分「娘の結婚相手の男が気に入らねえ!」からの襲撃シーンで地味にその男が親分を守るところ、ここ「あぁ!!」って思わず叫んじゃった。

こんなふうに特に語られない些細な描写に納得や感動をもたらす今敏の手腕に今作は唸らされる。

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あとこの3人の人間描写に共感。ミユキが自分の臭いに周りへの申し訳なさを感じる中、父親が現れるという追い討ちで思わず逃げ出してしまうシーン。ここなんか、自分の人生で何回似たような場面があったか…って共感の嵐。そしてミユキの行動を、何かあると察して特に追求しないハナさんにも泣ける。

ギンちゃんは嘘つくシーンが特に好き。娘と妻を捨てたろくでもない身の上のくせに、ハナに過去を語る時は悲劇の主人公感出して、一丁前に同情を買うため話を盛りまくるところ。ここ、母親を亡くしたのをいいことに悲劇を盛りまくる小学校の私にすごく似てる。

そしてムードメーカーで元気なハナさんだけど、実はこの中で1番救いようがない境遇にいるのが悲しい。でも冒頭のシーン以外は決してその色を見せず、2人に尽くして「なんとかなる」といつでも言ってくれる懐の大きさ。
そして本当は吐血するほどストレスが溜まっているのに、それまで全くその様子を見せなかった男気。ギンちゃんがハナに「恩を仇で…」とキレるシーンなんか「お前ハナさんがどれだけ苦労してると思ってんだバカ!」って叫びたくなったが、実はその場面もギンちゃんのために怒っていたという。いや貴方が聖人やんか…

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🌇まとめ🌇
最後にハナが風に舞われるシーン、そこに一瞬映る太陽、これがこの作品のすべてですよね。徹頭徹尾すべてが好きな唯一の映画、パプリカとかに隠れてあまり話題にならないからみんなに見てほしいな。
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