Iri17

突然炎のごとくのIri17のレビュー・感想・評価

突然炎のごとく(1961年製作の映画)
5.0
近所のTSUTAYAになく、今回初トリュフォー。

明るくウキウキした前半から、どんどん暗い話になっていく。
トリュフォーが描こうとしたのは女性の在り方。誰の所有物でもない、自由な女性の姿。男装で走り回り、男たちを置いてってしまう。セーヌ川に飛び込み、色んな男と関係を持ち、周りを振り回す。
彼女の行動は中盤に出てくる喋らない人形のような女を理想とする男たちへの反乱。女は物じゃないから。
男たちはフリーセックスするのに女は許されないのか?男は浮気するのに女は許されないのか?トリュフォーの疑問とジャンヌ・モローの挑戦がこの映画には詰まっている。

「太陽はフランス語で女性名詞だ」と言うセリフからも分かるように、ストレートの男なら女性は太陽のように必要不可欠なのに、それを自分の思い通りにしたい傲慢さ。
カトリーヌは男性の為の女性ではなく、自立した女性になろうとした。カトリーヌとジムとジュールが自転車に乗ってる時の位置関係が示唆に富んでいて素晴らしい。女は男の後ろを付いて行く存在ではないという意思が感じられる。

50年以上前にトリュフォーが描いた女性像はまだ日本は辿り着いていない。なぜベッキーはあんなに叩かれたのに、宮迫はオフホワイトで許されるのか?日本は未だ女性が性的に自立している事が許されない社会なのだろう。
女性が自由になれば、カトリーヌとジムのような悲劇的な最期を迎えることになってしまうのが、当時も現代も世の常なのかもしれない。

主演のジャンヌ・モローは『マドモアゼル』や『死刑台のエレベーター』でも自由で自立した女性を演じていた。トリュフォーの軽やかな映像で描かれる女性の解放と悲劇が尊い。素晴らしい作品だった。
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