もがきながらも不条理に殺されていく人々、まず想起したのが『激突!』だった。導入部では、警備員の顔はよくわからず、短い階段や影を巧みに使ってホラーに仕上げている。
中盤以降警備員の全体像がはっきりしてからは、まるで『激突!』そのものかと思った。外見はわかるのに、何を考えているか全くわからない。何故か殺されていく従業員たち。警備員の心境が語られないから面白い。
撮影は、主に固定カメラ、ロングショット、長回し。面白かったシーンは、警備員が人を引きずっていくところをローポジションからぐわ〜っと追っていくところ。それと、一瞬アルファヴィルを想起してしまった、長い廊下のロングショット。
アイテムとしては、透明のカーテンとそれと対になる黒いゴミ袋。そして、世にも恐ろしいアイテム「ロッカー」の存在。
スピルバーグの『激突!』のように、何故かわからないけど、追われる恐怖。それに、黒沢清のフィルモグラフィーから考えてみると、何かわからない物体に殺されるのは『CURE』の下敷きになっているように感じられた。