地獄の警備員の作品情報・感想・評価

「地獄の警備員」に投稿された感想・評価

不穏な室内空間に黒沢節炸裂。
溢れる70年代ホラー映画オマージュ。
音楽の安っぽさは故意なのか真剣なのか。

元力士の殺人鬼、富士丸を演ずるは今をときめく松重豊。
画面が暗くなかなか姿をはっきり映し出さない演出ではあるが、接写して欲しいファン心理から苛々させられる。

主人公に逸物を見せようとする変態課長大杉漣。
オークションにかかる美術品を評して、
『君ね、いくら美しくても女と同じだ。売れなきゃ意味がないんだからね!』
こんなセリフが最もオソロシイ。

何部屋か灯りのついた社屋の外観は裏窓チックでチャーミング。
低予算が吉と出たよく出来たホラーの典型のような作品。

全く走行感のないタクシー車内OPからして黒沢清ワールドが全開。
静まり返った会社の廊下や半透明なビニールカーテンに覆われた給湯室。
更には地下室に向かう螺旋階段や資料室の鉄扉まで、現代日本を舞台にしながら古典ホラーテイストを取り入れてるのが面白い。
まさに黒沢清的な「映画の嘘」。
何度もインサートされる会社ビルの夜の外観なんて最早ホラー映画の古城とかに見えてくる。

黒沢清映画の登場人物は、正気を失った人間味がまるでない人物か、とことん卑近でクズな人物のどちらかにあると思うけれど、今回はホラーにも関わらず後者なのがミソ。
社員達は皆利己的だったり小心者だったりと人間の醜さを体現する人ばかり。
そんなクズ共を血祭りにあげていく富士丸もまた、モンスターのようなペラペラな側面を持っていないからこそ見ていて安心できない。
彼が主人公に「惹かれる」だけならまだモンスター映画によくある展開だが、その後の彼のアプローチの仕方の気味悪さが出色。
イヤリングをお告げと感じる狂気!

そんな彼と主人公が遂に対峙する瞬間が、この映画でいちばん怖いシーンだ。
何度も言うように富士丸が野蛮なだけのモンスターなら倒して万歳で終わればいい。
でも目の前にいるのは、モンスターみたく残虐な殺戮を繰り返してきた紛れもなく「元人間」。
「私には絶望しかない」と語る彼は、突然変異ではなく圧倒的な絶望と狂気によって人間からモンスターに変貌したとはっきり分かるから怖い。

でもその片鱗に触れた主人公と富士丸の間に、一瞬だけ奇妙な絆が生まれるのには、少しだけロマンチックの香りがした。
しかしラストで呆然としたまま去る主人公を見るとそれもまた不気味だ。
ウガウガと喚くだけの怪物とは似て非なる富士丸が抱える、「理解できる事情と理解できない闇」を垣間見てしまった主人公は、もうその恐怖から逃れることは永遠にできないからだ。
NUZOO

NUZOOの感想・評価

3.6
松重豊が元力士の殺人マシーン…

今の立ち位置を考えるとありえない設定だけど、松重豊の警備員衣装の立ち姿がめちゃくちゃかっこいい。
あとは松重豊を食う勢いで変態おじさんっぷりを見せる大杉漣がいなかったらこの映画の面白さが半減していたかも。

警備員が建物を支配して殺人を犯すというシチュエーションスリラーの案が面白い。
ロッカー殺人のところ、アイデアも映像もナイス。

世の中の不条理さを体現するような富士丸の姿を見終えると、「地獄の警備員」というタイトルもなるほどな〜と思える。
ポリプ

ポリプの感想・評価

3.3

このレビューはネタバレを含みます

シリアルキラ-邦画「地獄の警備員」

元力士という経歴の新任警備員が入った夜にそのビルで起きた衝撃的な出来事とは…?という内容です。





難癖を言うと犯人役の○○さんの声が、低音でボソボソしているので私個人的には全く聞き取れなかったので未だに何をしゃべっていたのかが分からないのです。

いつかレンタルする機会があれば、その時には字幕で確認したいです。
MR8

MR8の感想・評価

4.0
ハリウッドの方法論で語られる顛末の"お利口さ"をカメラの翳りは見逃さず、
静かに、しかし確かにこの映画の行く末を捻じ曲げた(それはまるで今作における松重豊のやり口だ)。
言葉に構図に音に光に美術に役者に、全てを寄る辺として求めフィルムを繋ぐは黒沢清。
その手つきには嫌味な佞弁も、無骨な野心も感じられない。
あるのはただまなざしだけだ。出来事を見つめ瞬きし切り取り記憶し忘却した末、
想起されるスピルバーグの面影はともすれば臨終に身を翻し、するりとどこかへ消えてしまう。
今まで魅せられたものはなんだったのか?そう言いたくなる呆気なさ。
するとどうだろう、取り残された観客の気持ちとラストショットのエモーションは見事に一致した。
よくできた映画だよ。なんともすがすがしい。傑作。
寂々兵

寂々兵の感想・評価

3.6
初っ端から幽霊みたいな冴えない顔をした無機質な人間がゴロゴロ出てきて、その人間たちが夜のオフィスでシリアルキラーの元力士こと松重豊に棍棒で殺されていくなんて最高に決まってるじゃないデスカー。主にロッカーのくだりが100点満点。富士丸は『カリスマ』と世界観を共有してそうだ。他の映画に出てると大体死ぬ俳優がうっかり生き残ってしまうのも面白い。筒井康隆の『走る取的』を併せて読みたくなる力士ホラーの傑作。
mohedshot

mohedshotの感想・評価

3.8
俺は人智を超えた絶対的異界からやってきた。
記憶が正確ではないが、地獄の警備員が最後に放つ、その旨のセリフが今も頭に残っている。

しかし、よく今考えたら奴以外のキャラクターも皆それぞれの異界にて立ち振る舞っていたような気もして、大杉漣の変態課長の怪演が良い例だが、遠い記憶ゆえ、もはや定かではない。登場する皆が不気味になにかズレまくっているのである。というのは言い過ぎかもしれないが、好都合にも今や定かではない。

とにかく、この↓

君。インスリンを打ってくれないか?

い、嫌か!?

という、大杉漣の抱腹絶倒の不気味な名シーンを脳に焼きつけろ!!

合唱
たたみ

たたみの感想・評価

2.5

このレビューはネタバレを含みます

井之頭ゴローこと、松重豊のホラーキャラっぷりがかなり堂に入ってて見応えアリ。途中のロッカーをグシャグシャに殴って、ロッカーごと人を屠るシーンが今見てもなお、フレッシュでした。
ある会社にある女性(久野真紀子)が就職するタイミングで、殺人歴あるものの心神問題で罪に問われなかった警備員(松重豊)も就職していた。 
この恐ろしき警備員に、社員などが次々に標的となり、連続殺人の現場を目撃しながら物語が展開する不気味な物語。 
なかなかハラハラさせてくれる黒沢清監督作品であった。 
とりわけ「影の使い方」がうまかったので、不気味さが増したのではないか。 

大杉漣、洞口依子らも含めて、黒沢清作品への常連が出演しているのも嬉しい。
松重豊のメジャー俳優へと導くきっかけになった作品。

元学芸員の成島秋子は商社に就職し、絵画取引を担当する。
同じ日に入社した元力士の警備員の富士丸(松重豊)は、元殺人犯だったが、精神鑑定の結果、無罪となっていた。
だが、富士丸はここでも殺人を犯し始め…

松重豊が狂気の警備員を演じる。
どう見ても、元力士には…
そして、セキュリティ担当が人を襲っていくという理不尽さ。

闇に隠れて、殺人鬼の顔がはっきりと見えないのも気味が悪い。

ほとんどが棍棒による撲殺ですが、ロッカーを潰すのにはマイッた。

ラスト30分の展開は目が離せない。
そして、ラストは…

故大杉漣さんが、怪しい役で出演しています。合掌。