ブタブタ

蜘蛛の瞳/修羅の狼 蜘蛛の瞳のブタブタのレビュー・感想・評価

5.0
ホラー・フィルムノアール・実験映画。『CURE』の後のこの『蛇の道』『蜘蛛の瞳』二部作を経て『回路』に続いてるのだと思う。
同一時間上の世界と言うか。
娘を殺した男(寺島進)(←かどうか本当のところ分からない)に復讐を遂げた新島(哀川翔)は生きる目的を失い(という割には奥さんと楽しくやってるけど)日々空しさを感じている。
そして突然現れる男、岩松(ダンカン)によって不条理かつ異様な世界へと身を投じる事になる。
『蛇の道』の続編的作品ながら此方の新島は同一キャラクターの別人でストーリー的繋がりはない。

何でもコロナ禍と繋ぎ合わせればいいとは思わないけど、やっぱり今現在のこの世界を覆うパンデミックは『回路』の世界に現実が近づいていってしまった様な恐怖を感じるし、この『蛇の道』『蜘蛛の瞳』の世界は目に見えない「悪意」みたいなものが世界を覆っていてそれが現実世界に物理的影響を与え始めているような異様な感じがする。
「起」の次がいきなり「結」
「承」と「転」がない。
編集でカットされてるというよりこの世界では始めからない、みたいな気もする。
既にこの頃「北野武映画」ってフィルムノアールが確立されてて、その様式美や世界観を使って、更にはVシネマのフォーマットで黒沢清監督が撮った前衛実験映画。
社会を裏から動かすダークサイドシステムである【ヤクザ】は現実の非合法組織というより、もっと巨大で得体の知れない内部の人間の幹部でさえ、その規模も果ても解らない、もうひとつの暗黒世界で、システムだけが独り歩きして人間はただ黙々とそれに従ってる様に見える。
そこからの指令で動く実行機関である、表向きは(?)「殺人請負会社」の岩松コーポレーションみたいな民間会社が恐らく他にも沢山存在してるのだと思う。
もう一人の主人公と云えるダンカン演じる岩松は、その実行部隊の指揮官であり、いつ終わるとも知れず繰り返される殺人暗殺業務、「戦争」に疲れきり精神を蝕まれている。
そこに現れたのは既に「虚無」と化した人間の新島であり、新島は岩松にとっての「救い」だったのかも知れない。
棒に白い布を巻いた「アレ」は何なのか。
オチもなく終わりも無いカフカ的なラスト。虚無と絶望の世界にひとり残った新島の次の話しは作られない事で、あの世界は之からも無限に続くのだと思う。
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