ゆんずん

戸田家の兄妹のゆんずんのレビュー・感想・評価

戸田家の兄妹(1941年製作の映画)
3.7
1941年のお金持ちの暮らしぶりと価値観を興味深くみた。私たちはこの数年後に何が起こるか知っているから様々な感情を持たずにはいられないけれど、公開当時のひとたちはどのように見たのだろう。世間知らずなお嬢様が滑稽にうつっただろうか、家族間の愛情の希薄さに我が身を振り返っただろうか、身勝手な弟が兄妹を批判するのをどのように感じただろう。

この12年後に作られた『東京物語』とテーマは同じようだけれども、そちらは庶民的で普遍性を感じるものだったのに、こちらはどこかフワフワとしていておとぎ話のようだった。しかし画面の構成はすでに小津映画然としているのが凄い。三越のお着物を使う、とか何か制約があってこういうストーリーにしたのかもしれないなどと想像するのも楽しく、しばらく味わうことができる映画だった。