odyss

喝采のodyssのレビュー・感想・評価

喝采(1954年製作の映画)
4.0
【心理劇にして舞台内外での演技の映画】

もともとは舞台劇だそうです。1954年のモノクロ・アメリカ映画。

原題が"The Country Girl"なのですが、これはヒロインのジョージ―を指しているんでしょうね。彼女が田舎出身ということは作中では強調されていませんが、都会出身の派手好みできらびやかな女ではなく、地味だけど堅実で辛抱強い性格を表現しているのでしょうか。

昔はスターだったけど今は落ち目のミュージカル男優(ビング・クロスビー)を再度よみがえらせようとする演出家(ウィリアム・ホールデン)。演出家は男優と妻との関係に問題ありと見て、妻を男優から引き離そうとします。が・・・・

ここでは途中まで男優と妻との本当の関係がどうなのか、男優の言い分と妻の言い分のどちらが正しいのか、よく分からないようになっています。途中からようやく真相が観客には見えてくる。そこまでの過程は、繊細な心理劇としての面白さがあって、秀逸だと思いました。

また、真相が分かってからは一種の舞台内舞台、つまり俳優が日常的にも芝居をしているという作品として楽しめます。

他方、この作品は男女の三角関係をも描いている。ただ、この面については私は十分な説得性を感じませんでした。グレース・ケリーも、最後を除いては地味な服装、地味な表情に徹していて、いかにも落ち目の俳優の妻といった印象です。

もう一つ説得性を感じないのは、最後の土壇場で俳優が立ち直るあたり。ラストはこうでなければとは思うものの、もう少し別の伏線を入れておいたほうが唐突感が減ったのではないかと思います。

しかし、ともあれ心理劇と舞台内外での演技という二つの面で堪能できる映画であることは間違いありません。
odyss

odyss