ボーンシリーズで有名なポール・グリーングラス監督ということで、お馴染みのチラチラとした多数のカットが精神的にも物理的にも揺れる機内をよく描いていた。事実をほとんど忠実に再現した映画ゆえのなんとも言えない後味が残る作品。当然ながらアメリカで作られた映画なので、イスラームの聖典コーランを詠唱するムスリム戦士の狂信性が強い印象を与える仕上がりになっている。しかし、9.11事件に至る歴史的背景を思えば、一概にアメリカが一方的な被害者であるとも言えず、作中のムスリム戦士たちを突き動かしたもの、もっと言えば国際社会や世界の構図にまで視野を広げて考えなければ、この悲劇が起きたメカニズムを理解することはできないだろうと感じた。
