丹叉

ユナイテッド93の丹叉のレビュー・感想・評価

ユナイテッド93(2006年製作の映画)
4.3
結局、映画体験において最も身近に感じられ、没入できるのは実話ベースの作品である。中でも飛行機ハイジャックというのは外部からの助けも得られない絶望溢れる状況が容易に想像でき、また不特定多数の一般人が犠牲になるのであり、他のどんな悲劇よりも自分と犠牲者を置き換えやすく、臨場感や恐怖感を覚えやすい。つまり、そもそもの題材が非常にスリリングな作品に仕上がる要素しかないのだが、右要素を極限まで追及することで、圧倒的な没入感と臨場感の中で最高級の恐怖体験を味わえる作品が誕生してしまった。本作を撮るのにグリーングラス監督は適役すぎた。彼の監督作を見ればリアリティある演出に長けているのが分かるが、特にアングルを固定せずに程良い手ぶれ感と流れるようなカメラワークを多用する撮影は特徴的で、そして本作においては複数の管制塔や飛行機間の意思疎通を当事者が実際に体験している感覚に近づけるべくした同時認識的な編集とも相まって、最も生々しい形で歴史的なハイジャックを体験することができた。
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