佐藤克巳

黒い画集 あるサラリーマンの証言の佐藤克巳のレビュー・感想・評価

5.0
松本清張原作、橋本忍脚本、堀川弘通監督のスリラー映画の傑作だが、小林桂樹のサラリーマン物としても集大成の一本だろう。まず
小林が退社、向島では主婦殺人が起こり、新大久保で何気なく隣人に挨拶した事が、同社愛人原知佐子との関係露出、妻中北千枝子との円満な家庭の崩壊、順調だった会社での立場を危うくする懸念が生じ、その事実を警察で偽証し更に墓穴を掘る事態となる展開。そのスリリングなストーリーの良さの他、小林との不倫はあるものの原のフレッシュな魅力が素晴らしく、それに介入する不良学生江原や児玉・ヤクザ小池の若手俳優の演技力を引き出した堀川の見事な演出と、橋本の卓越した脚本が単なる推理小説の域を超えた人間ドラマを構築した。
佐藤克巳

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