黒い画集 あるサラリーマンの証言の作品情報・感想・評価

「黒い画集 あるサラリーマンの証言」に投稿された感想・評価

ごく普通のサラリーマンが浮気を隠すために殺人罪で嘘の証言をするが、やがて引っ込みがつかなくなり泥沼にはまり込んでゆく・・・。

『張込み』『ゼロの焦点』『霧の旗』『砂の器』『影の車』と数多くの松本清張・原作の脚色を手掛けてきた橋本忍の一作。
まるで岡本喜八監督『江分利満氏の優雅な生活』のダークサイド版のようで見ていて悲しくなる。同じく平凡なサラリーマンで、同じく家庭をもって、同じくサラリーマンの悲哀があって、同じ小林桂樹が演じていてるにも関わらず、辿る結末はかくも違うのか、と。『江分利』で会社人の悲哀と愚痴をユーモアに包んで楽しく頑張っていたサラリーマンと、本作の追い詰められた獣のような表情のサラリーマンが容易に重なる。それは両者ともにまったく”普通の人”であり、普通の人を演じさせると小林桂樹の横に出る者がいないからである。他人事として見ることができなくなるからこそ、辛いし、苦しいし、上質なサスペンスになる。
脚本も素晴らしい。
どんなに足掻いて、もがいても、すべての選択、偶然が悲劇にしか向わない、この無力さと虚しさ。運命のような巨大なものの前で人間がいかに価値のないものか、ということを嫌というほど教えられる。
『侍』『切腹』『上意討ち 拝領妻始末』『仇討』『悪い奴ほどよく眠る』『八甲田山』『日本沈没』『白い巨塔』に連なる橋本忍のテーマを如実に表現したような映画だった。
●'98 11/〜『松本清張 映画全集』特集上映
(初公開: '60 3/13〜)
配給: 東宝
ワイド(東宝スコープ) B/W
パースペクタ・ステレオ
11/16 11:00→14:17〜 シネマジャックにて観賞
フィルム上映
モノラル映写
作品パンフ無し
特集上映パンフ無し

同時上映:
「影なき声」
tarouman

taroumanの感想・評価

3.0
池袋新文芸座 追悼橋本忍

これは面白い。まさに松本清張を読んでいるようでページを捲るのももどかしいあの感覚。
突っ込みどころもいろいろあったりするものの、気にならないのはよくできたシナリオのおかげか。
余談ながら小林桂樹が徳光さんに見えて仕方なかった。
今さらながら橋本忍の仕事に敬礼。
20180909新文芸坐
うーん面白かった!
二転三転して因果応報のシナリオ。90分台とは思えないぐらい濃い脚本だった。
waltz

waltzの感想・評価

4.3
今じゃICカードの履歴で一発解決だけど、当時は自分のアリバイを証明するのがなんと大変なことか!小林桂樹を応援する気持ちとばれて欲しい気持ちが混じり合って、最後まではらはらさせられた。
Kuma

Kumaの感想・評価

4.2

このレビューはネタバレを含みます

不倫中に近所の人に会った。後日その人が殺人犯として逮捕され、冤罪を証明できるのが自分だけと知る。
本当のことを言うと身の破滅。しかし言わないと無実なのに死刑。

葛藤がひどい。少しずつ悪い選択をし、ドンドン深みにはまっていく。

シナリオだと真犯人が捕まらずに終わるが、本作では釈放される。
どっちがいいかわからないが、シナリオほど主役の醜さが伝わってこなかつたのが残念。すっごく面白かったけど。
平凡な中年サラリーマン石野(小林桂樹)は会社の若いOLチエコ(原知佐子)と密かに不倫をしている
その秘め事を隠すために、ある殺人事件の証言に嘘をつくことになってしまう
その後の裁判でもなんとか嘘を貫き通し安堵した石野であったが、不幸の連鎖は続き決定的な破滅が訪れる、、、

こないだ見た「白と黒」と少し近いかも
自分の証言いかんによって無実の者が有罪になるかもしれない、だがその証言をすることは身の破滅につながる、かと言って良心の呵責もあるし、、、みたいなぐるぐる

主人公の小林桂樹は特に悪人ではない、確かに不倫はよくないけど、破滅にまで追い込まれちゃうのはかわいそうに見える
自分の取った行いが自分に返ってくる、因果応報、皮肉を感じちゃう展開
他人が有罪になろうと証言しないってのも破滅を考えれば仕方ないと思う

運が悪かった以外に悪いところを挙げるなら、やはり全ての要因になった不倫かなぁ、ちょっとした不倫でもこんな悲劇もありますよ!不倫はやめましょう!的な映画かもしれない

相手役の原知佐子が健康的でかわいかった、結構好きな女優さんなんだけど、こんなにメインヒロイン格の作品を見たのは初めて、その点でも収穫ありました
わかるわかる。
大なり小なりこんな嘘を築きたい場面は腐るほどあるし、苦しむ主人公の気持ちや行動も痛いほどわかるのだ。
しかし、嘘をつくのに「映画をみた」は絶対に使っちゃ行けないし、深く聞かれたらクソ面倒なことになるうえに一人で行ったらアリバイにもならないので、軽々しくつかうべきじゃないということを教われる映画でした。
「あんたいつも映画見てる!」には爆笑。
社内不倫とか相手の部屋にノコノコ出入りしたり、忘れ物したり、この手の映画の愛人囲いは危ない橋渡りすぎだし脇甘すぎじゃないだろうか。と、毎回楽しんでしまう。
さよならの演出とてもよかった。
事の顛末も「あーあーあー。。」としか言えない展開。因果応報。
結局嘘で出来た歪みは嘘で塗りつぶすしかないし、連鎖してった先でかならず崩壊するんですね。
ラストの見た映画の場面説明と流れるギター、とてもよかった。名シーン。
今の自分の現実から逃げた先に、平穏なんかはありはしないのだ。


昔の東京駅ロータリー周辺、地下鉄新丸ビル口、新大久保の風景が観れるのもよし。
愛人がいる小林桂樹
家族に嘘笑いする小林桂樹
一人でブツブツ言う小林桂樹
ゴネる小林桂樹
慌てる小林桂樹
泣き言を言う小林桂樹
など
色んな小林桂樹らしさが見れるので、小林桂樹ファンにもたまらない一本。

めちゃくちゃ面白かったー
○ストーリーに意外性こそないが、昔の邦画に良く見られた教訓がはっきり描かれている。

○映画が話題に上る場面の対比が面白く、小林桂樹が観た映画のあらすじを必死に語る場面は名演。

○ラストで主人公を突き放すようなロングショットはドキッとさせられた。

○小林桂樹は当時の年齢、役の年齢からしても10歳以上老けて見える。
誰の心にもある、都合の悪いことを誤魔化したいという気持ち、小さな嘘をついてしまう弱さを描いた秀作。主要人物が皆、自分のした過ちの程度によって報いを受けるところに綺麗に着地させる展開は、さすが橋本忍のシナリオ。
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