デヒ

キューポラのある街のデヒのレビュー・感想・評価

キューポラのある街(1962年製作の映画)
4.5
映画のキーワードは「貧困」と「若者の自我探し」と「在日韓国人の帰国運動」だと思う。主人公のジュンの親は貧困な状況の中で仕事を探してみるが、なかなか適応ができない。県立の高校での進学を希望している娘に働け!と責める親。確信の夢を追いかけたジュンだが、親の言葉で若干迷って、高校の先生と様々な人の言葉で考え直し、自我を確信するようになる。そして差別を受けられていた在日韓国人が帰国運動を通して韓国に戻れるようになった。この三つがこの映画の重要な流れではないかと思った。すごく伝わってきたし、面白かった。特に帰国運動を通して、今村監督の『にあんちゃん』が思い出された。感動的で、人物たちの成長してゆく姿で微笑みながら観ることができた作品だった。


すごく面白く見た今村昌平監督の『にあんちゃん』で韓国人のおばさんを演じた北林谷栄さんが出ている。にあんちゃんでは面白い演技で印象に残っていたが、この映画では違う雰囲気の演技をしていて、新しい発見だった。
私はジュンを演じた吉永小百合さんも良かったが、弟のたかゆきとその友達の在日韓国人の子役を演じた人が印象に残っている。最初にはただ物心がつかず大人振りをしている少年に過ぎなかったが、最後を見れば、万引きをせずにちゃんとした仕事を持って働いている。大変化している。ジュンより大きく変化したのではないかと思う。在日韓国人の男の子がお母さんと叫びながら泣く場面は感情がよく伝わって本当に悲しかった。
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