すー

キューポラのある街のすーのレビュー・感想・評価

キューポラのある街(1962年製作の映画)
5.0
1962年の映画で、これまで私が見てきた高度経済成長後期よりもさらに10年ほど前の、まだまだ貧困層が救いのない状態、着るものにも困る激貧な時代。

鉄の溶解炉工場だらけの川口市で、食うもの着るものにも困る毎日を、明るく元気に生き抜く姉弟のお話。

父親は工場クビになって酒ばっか飲んで働かない。プライドと偏見に満ちた調子で、朝鮮人の友達と遊ぶなと言ったり、家族に手をあげたり、やばい奴。母親が子供を連れてさっさと逃げられないのか、と思考してしまうが、それができないのだろうなぁ。女性には4人の子供を育てるほどに働ける口なんてないし、そんな選択肢はないのだ。だから母親はすがる。「あんた、働いておくれよ〜」

その中で強くたくましく生き、「私高校行くから!」と前を向いて進むジュン役の吉永小百合が美くしゅうて。
目が強いんですよ。貧困に負けていない目なんです。環境に飲まれていない。お金がないなら稼ぐ。理不尽な不良には噛み付く。それでもときには心もやられる。あたりまえだ!中3よ。


一方、元気な弟は、悪さばかり。
後半で自分のした泥棒で、自分と同じように貧しく一生懸命稼いだ人を困られたことによって、何かを感じ、一気に大人の階段をのぼる。

ああ、この2人の生きる姿に感動。

観ながらどうしても「一見優しい先生に乱暴なことされるんじゃ…」とか「仲良しの勉強会やる友達にきつい裏切りされるんじゃ…」とか、「お友達にバイト代持ってかれるんじゃ…」とか「恋は?恋!」とか考えてしまう浅はかでつまんない思考回路の私を、大きく裏切り、まっすぐな人ばかりの世界を魅せてくれた。

朝鮮に帰る姉弟の存在も大きかった。
偏見のないノーマルな価値観で結ばれた人と人との真の友情は美しい。どんな時代も一緒。
すー

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