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ホテル・ルワンダのTaSのレビュー・感想・評価

ホテル・ルワンダ(2004年製作の映画)
3.8
主人公がとる「家族が最優先。手の届く範囲は、余力のある限りで守る」というスタンスに対する「若干の気に食わなさ」を感じたというのが、まずもっての感想。ホテル全体を守ったというより、家族を守るための手段としてホテルを守った「ついで」に他の人が救われた、というところ。

この気持ちは「(何かを顧みない)善行がみたい」という映画に対する無意識の要求なんだろうなと思う。杉原千畝の逸話みたいなものを重ねているのかもしれない。

ただ、鑑賞後の今になれば、実際にあった(今もどこかにある)ルワンダの虐殺のようなリアルの前では、こんな要求は無意味なんだとも思う。

自分が同じ立場だったら、ポールみたいな「強か」な所作をできたものだろうか。妻の人種を幾度となく「臭いゴキブリ」と称され、「欧米からすればニガーですらない、アフリカ人でしかない」と切り捨てられ、虐殺の現場を報道されても「怖いね」とテレビの向こうのディナーの肴にされるだけだと断じられても、まともでいられるのか。。

翻って考えると、残酷な世界の中で、彼がとった手段はほぼベストに近く、そのことが何よりも現実の惨憺さを示しているという、物凄く切実な映画なのだと思った。

自分もまた、「大変だな」と思いそのまま眠るわけだけども。果たしていつまで他人事でいられるものか。
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