Jeffrey

ダウト 〜あるカトリック学校で〜のJeffreyのレビュー・感想・評価

3.8
‪「ダウト〜あるカトリック学校で〜」‬
‪冒頭、1964年ニューヨーク。厳格なカトリック学校。教会、1つの疑惑、それを確信へ。神父の誘惑、不純性行為、今2人の壮絶な激論が幕を開ける…本作はJ.P.シャンリー監督がトニー賞とピュリッツァー賞を受賞した舞台劇を自らの戯曲を映画化し、原作、脚本、監督を務めた力作だ。まず本作が公開されたのは2008年で、米国には新たな黒人大統領が誕生する大きな出来事が起きた。そんな中、正しさを求めた結果の罪を告白する幕閉め迄の約100分間は存分に楽しんで観れる映画だと個人的には思う。さて主要キャストのM.ストリープと故P.S.ホフマン、V.デイヴィス、E.アダムスの4人の駆引き、葛藤がスクリーンから怒涛の如く伝わる迫力満点の芝居合戦が最高なのだ。物語は司祭を務めるフリン神父と唯一の黒人生徒ドナルドに優しく接する。それを新米シスターのジェイムズが厳格な校長アロイシスに神父は彼に関心があるようだと言う。それをきっかけに校長は黒人少年とフリン神父を監視し、疑惑を深めていく…。そしてドナルドの母であるミラー夫人を学校に呼びつけ話す。それを見た神父は激昂し、校長アロイシスと口論する。軈て2人は最終局面へと向かうのだった…と単純に話すとこうで、中々の見応えある作品で、舞台設定が60年代という事で、やはり少年愛への世間の目は厳しく、犯罪者扱いされる危険があった。勿論、今では同性愛は合法化しつつあるも、合意なき一方的な愛は許されないが、本作で少年の母は息子にはその毛があるとシスターに伝えている。すると、その疑惑とされる同性愛は互いに理解している。だが、年齢差があり、少年はよく分からないんじゃないかと新たな疑惑を持つ事も出来る。そう、このダウト=疑惑という映画は疑惑の数珠繋ぎであるのだ。ところがだ、舞台はカトリック学校だ。疑惑を持つ人と持たれる人、もし万が一その疑惑が外れた場合、シスターは神を絶望させる無実の人に罪を持たす宗教的に大罪を与えるという後戻り出来ない状況に自らはまっていく事にもなり兼ねない…そんな危険もあるが物語が一層面白く、深まる場面は第三者の存在である。それは少年の母である。彼女が出現した事により、疑惑が更に分裂し、難解なミステリー状態になる。それは母が口走った◯◯である。これは凝り固まった校長に衝撃を与えるのだった…そして観客はその場でこう思うはず、この校長には違った発想を転換する能力がないのじゃないかと…それは全てが疑惑であり、それ以外の答えが彼女には無かったのである。そう、何が正しいのか、正しく無いのか…疑惑から移り変わる問題定義が本作の最大の見所なんじゃないか、こんな誰もが好む題材じゃない作風を万人受けできる形で残せたの素晴らしい事で、拍手喝采ものだ。それにしたってメインの登場人物が4人だけで、ここまで怖く、楽しく、描けたのは凄いとしか言いようが無い。本作はなんと言ってもストリープを喰うデイヴィスの圧倒的な芝居力とホフマンとの演技合戦だろう。これだけで観て良かったと記憶する素晴らしいシーンだ。本作を観て思った事は持論を展開する人に鉄の様な厳格な人(シスター)には疎まれ嫌われ、疑惑の眼差しで見られるんだなと…いや〜正直M.S扮するシスターアロイシスはウザい。結局は信念を貫く者同士が戦う作品なのだが、この疑惑でしか相手や物事を解決、見ないシスターが強烈で、物事を広く解釈しない人間の恐ろしさが存分に伝わる。‬ ‪今の米国の二極化にも言える様な事がダウトと重なってしまう。にしてもデイヴィスはこの頃から芝居が上手くて脱帽する。後のヘルプでもノミネートされ、数年前には念願のオスカー女優になり、今後も期待したい女優の1人だ。未見の方お勧めです‬
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