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幸福の黄色いハンカチのSIのレビュー・感想・評価

幸福の黄色いハンカチ(1977年製作の映画)
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2019.5.1
自宅TVにて鑑賞

「なごり雪」─イルカ
"あいたーすっ!"

山田洋次初鑑賞。
コメディとドラマを混ぜる作風とすら知らなかったが、今作の完成度の高さに衝撃を受けた。
武田鉄矢と桃井かおりが引っ張るコメディと、高倉健と倍賞千恵子の純愛ドラマの重ね合わせが素晴らしく気持ち良いロードムービー。

6年ぶりに網走刑務所を出所した島勇作(高倉健)は、東京から失恋旅行にやってきたふざけた青年欽也(武田鉄矢)と、道中で引っ掛けられた同じく傷心の朱美(桃井かおり)と奇妙なドライブを始める。三人は楽しげな旅のなかで互いに傷を癒し、勇作は妻光枝(倍賞千恵子)の流産がきっかけで光枝と揉め、ヤケになったところでチンピラを殺してしまった過去を打ち明ける。服役中に光枝と離婚したものの未練があり、出所の朝に「もし自分を待ってくれていたら軒先の竿に黄色いハンカチを掲げてくれ」と約束していた勇作。三人は光枝の住む夕張に向かう。

冒頭、武田鉄矢の無造作でコミカルな演技が驚き。映画初出演でこんなことができるとは。現代人とは身体感覚がやはり違う。
桃井かおりは正面ドアップで捉えた時に少し厳しい。確実に今のが綺麗である。トレードマークとなった吐息混じりの話し方はさすが。
高倉健、右手で箸でラーメンを持ち上げるその所作が既にかっこよすぎる。一瞬で上手いと分かる演技。一度だけ見せたはにかんだ笑顔が個人的に刺さった。
渥美清は初めて見たが風格が凄い。人格が滲み出てしまっている。歯が黄色い。

山田洋次、あまり期待していなかったが基本的な撮影技術のレベルがとても高い監督だと感じた。どの構図も良い。
ロードムービーは段々車内でのカットが飽き飽きしてしまうのだが全くそんな風に感じなかった。とても車を上手く撮っている。雑なトラックアップとトラックバックもどこか味があって良い。
光と影の使いかたも基本を押さえていて上手い。
また北海道の自然をとても綺麗に撮っている。特に赤く燃える夕焼けが凄かった。

終盤、工事の黄色い旗、鯉のぼりが憎い。これぞモンタージュ。思い出したように夕張に向かうと切り出し始める高倉健。素晴らしい。

『男はつらいよ』も観てみます。国民に愛され続ける監督、やはりその力量は凄まじいものがありますね。
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