鷲尾翼

ハウルの動く城の鷲尾翼のレビュー・感想・評価

ハウルの動く城(2004年製作の映画)
4.5
【まとめシネマ】#988

【まとめ】
* 個性を魅せる見事な役者陣
* 何度でも見れる時計仕掛け
* 素晴らしいバランス、その魔力の虜

宮崎駿監督最新作『君たちはどう生きるか』の予習鑑賞

本作で声優を務めた役者陣がとにかく素晴らしい。

倍賞千恵子演じる18歳の主人公・ソフィーは、荒地の魔女の呪いで90歳の老婆になってしまう。若い声と年老いた声を変幻自在に使い分け、愛らしい個性豊かな性格も声色で見事に演じている。

魔法使いの青年・ハウルを演じる木村拓哉は、声色ひとつで別人のような印象を与え、時に見せる弱さも、声の震えも、愛おしく思える。これも彼も魔法である。

荒地の魔女を演じる美輪明宏は、圧倒的存在感で作品を染める。時にその声色は、作品を操る危険な凄味だと思わせる。

他にも神木隆之介、我修院達也、加藤治子など個性豊かな役者陣が、キャラクターの個性や心情に寄り添い、素晴らしい声を添える。

本作を改めて気づいて、この作品がジブリが描く「タイムリープ」だと気づく。ハウルが初めて登場した第一声が「やぁやぁ、ごめんごめん探したよ」である。この何気ない一言が、終盤で大きな意味を持ち、物語が一気に壮大に広がる。そして、もう一度本作を見直すとき、あの台詞から物語が動き始めることを改めて知る。

本作は、素晴らしい役者陣で構成されたキャラクターや物語の展開はもちろん、ハウルの城の造形美、戦争という絶対悪、ユーモアとシリアスの塩梅、その全ての要素が見事なバランスで描かれた素晴らしい作品だ。そして、作品の魅力の虜になったとき、それが魔法だと気づくかもしれない。けど、その魔法も愛したい。
鷲尾翼

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