青二歳

劇場リミックス版 アップルシード XIII 〜遺言〜の青二歳のネタバレレビュー・内容・結末

2.3

このレビューはネタバレを含みます

TVシリーズ(ネット配信)の総集編。
アップルシードの世界観っていまいち腑に落ちない。人間に奉仕するために作られたバイオロイドの意思や立場が見えにくいところもその理由の一つ。プログラムされて作られたクローンなので、働くこと生きることは権利ではなく義務であるという。「ヒトのために」活動するバイオノイドは、上は行政の執政官から、エンジニア、科学者、果ては彫刻家までその職務は様々。
しかし都市国家オリュンパスではヒトの人口が2割。(他の第5時世界大戦後の各国の人口分布は不明)ヒトに奉仕する存在が8割で、奉仕されるべきヒトは2割。この人口分布は恐ろしい値だと思う。

さてアニメオリジナルのサーティーン。後半”予言”は個人の復讐がメインだが、前半”遺言”ではヒトの種の保存を訴えるテロリストが活躍する。彼らはブリアレオスに「ヒト至上主義の過激派は時代遅れの保守派」だと言われてしまう。なぜなのか…テロという手段が間違っているだけで、目的は間違っていないと思う。人類が絶滅してしまうのだから無理からぬ運動ではないか。
だがブリアレオスは「時代遅れ」という。なお、後半”予言”でブリアレオスは最後に、「ヒトとバイオノイドが共生できる社会をつくらねば」という言葉を残しているが「共生」って何だ…バイオロイドはヒトに奉仕するためにつくられたクローン。その意味ではヒトと共生する存在であることは間違いないが、どう考えても序列は生じるのではないか。

もちろんバイオノイドは感情・欲望を抑制されているだけで、感情はあるし、性格も各々違う。劇中でもみんな楽しく飲み食いなど楽しく過ごして共生は当たり前の光景として描かれる。だが耳障りのいい「共生」という言葉は、バイオノイドが提示するテーゼを隠してしまうのではないかと思う。ヒトの人口がこれ以上減少した時、果たしてバイオノイドはヒトに奉仕するための存在であり続けるのか。

都市国家オリュンポスでは、実はもうバイオノイドの存在意義は当初からズレているのではないのか。ヒトの未来のために動いているガイアという巨大コンピュータも、為政者のバイオノイドも、どんな未来社会を描いているのか…それはヒト不在の未来でないのかー
人類の人口が減り続けたとして、もし絶滅した場合、バイオノイドたちだけで種をつなぐのか?或いはバイオノイドは自らの存在意義を喪い自死するのか?
世界大戦を収束することができずただ疲弊していく世界で、突如現れたオリュンポス。平和のためにヒトに代わって世界を統治する機構であるが、人類が滅亡するなら戦争もないのだから存在意義はなくなるでしょう。人類のいない、野生の動植物だけの世界は確実に” 世界平和”じゃないのか?

バイオノイドってどんな存在で、ヒトの未来、ひいては自らの未来をどんな風に考えているのか…もやもやしたまま後半の“予言”に続く→
青二歳

青二歳