あんじょーら

秋日和のあんじょーらのレビュー・感想・評価

秋日和(1960年製作の映画)
4.1
カラーの小津作品を初めて見ました。
友人の法事で集まった3人の男たちが、亡き親友の未亡人(原 節子)とその娘の結婚を気にやみ、いろいろ働きかけることから始まる「晩春」の親子が父娘でなく母娘になったかのような話しです。しかし、カラーになり、時代も変わったことから、様々な仕掛けがあり、より現代調といえます。やはりホームドラマの基本的な物事がいろいろ詰まっている名作です。特にこの作品だけからではありませんが、山田太一さんのドラマの会話はとても小津作品の影響を強く感じます。ホームドラマのプロトタイプといえると思います。

そしてとてもたくさんの食事風景が出てくるのも面白かったです。でも1番驚いたのは、原 節子がお母さん役になっていることで、娘までいる役なのに、全然見えない、ということです。

物語の収束点に、「足るを知る」という、もしくは「そういうものである、ということを受け入れる」というスタンスが繰り返されるのですが、もちろん哀愁ある余韻も感じられるものなのですが、それだけでない今では失われつつある(と、どの世代の人もオトナになって数十年経つと感じているであろう普遍のこと、と分かっていますが、あえて)感覚を浮き彫りにしてくれて、とても私は清清しく感じました。