爆裂BOX

ワールド・デッドの爆裂BOXのレビュー・感想・評価

ワールド・デッド(2011年製作の映画)
3.7
有害な薬品を積んだ列車が事故を起こし、薬品が流出、人々はゾンビと化す。サムとジェニーの夫婦はサムの弟ニックと共に娘を捜して避難所に向うが…というストーリー。
JVDのゾンビ映画で思いっきり「ウォーキング・デッド」をパクッたジャケとタイトルに期待せずに見ましたが、シリアスで真面目なゾンビ映画でした。
サムとジェニーとニックと、途中合流したアーマッドとAKと共に避難所に籠城するも、そこに娘はおらず、更に噛まれてゾンビ化する人間や諍いにより避難所は崩壊していくという内容です。ストーリーはゾンビ映画の王道といった感じの籠城系ゾンビ映画で、ゾンビとの戦いよりも避難所での人間ドラマがメインになっています。
ゾンビは結構エキストラを多く雇っていてかなり数は多いです。避難所に押し寄せて周りを取り囲むゾンビの群れの数はちょっとした大作くらいいるんじゃないかな。ただ、メイン以外のゾンビのメイクは適当で演技も良くないです。お食事シーンもほぼないですね。
序盤の日常生活がゾンビによって侵食されていく感じはかなりいいです。窓の外を見てノロノロ歩く人達を見ても呑気な感想こぼす所とか、日常の中にジンワリとゾンビ達が入ってきている感じが堪らなく良いですね。普通にスーパーで買い物してて、悲鳴に気づくと周りでは人が人を襲う光景が繰り広げられているシーンは一気に日常が非日常に覆われていく感じがゾンビ映画ファンとしては最高でした。
避難所での人種差別、仲間や愛する者のゾンビ化、といったドラマは非常に良かったです。特にゾンビに噛まれ、手錠で繋がれて母親の目の前でゾンビ化する息子のシーンはゾンビという怪物の持つ悲哀をこれでもかと感じさせてくれます。また、何もできず傍で息子が怪物に変わっていく様を見るkとしかできない家族の苦悩なども結構丁寧に描いていたと思います。リーダーがやむなく下した決断が反感と火種を呼ぶ展開も、誰が悪いという訳じゃない所が妙にリアルでした。でも、あの離脱考えてた女性たちが崩壊の切欠になるかと思ったら、その前にガラス割れちゃいましたね。
終盤のシーンはかなり悲壮感が感じられます。ジェニーの潔すぎる最後の決断は感動しました。撃たれた彼女にゾンビが群がる所はショッキングです。
また、ゾンビになったサムがジェニーの呼びかけに何かを感じたように立ち止って動かなくなるシーンも印象的でした。
登場人物の設定もしっかり描かれていました。特にテキサス出身のアラブ人のAKとテキサスレンジャーはイイキャラでした。この手の避難所のリーダーは独裁者キャラだったりしますが、テキサスレンジャーは自身も家族を亡くした悲しみを抱えながらも責任感を持って時に厳しい決断下しながら避難所の人間を守り抜こうとする好漢として描かれていたのは新鮮に感じました。
逆にニックは空気読めない事いうし、ろくに活躍しないし最後まで駄目すぎて印象に残ったなぁ(笑)
最後はちょっと蛇足なきもしますが、あの絶望感は好きですね。
エンドロールの後のオマケは何か呪怨の伽椰子っぽいですね。
低予算の自主製作映画なので安っぽい所も随所に見受けられますが、シリアスで手堅く作られたゾンビ映画でJVD配給のゾンビ映画の中では良作の部類に入ると思います。ゾンビ映画ファンは見ておいて損は無いと思います。