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別離のmaiのレビュー・感想・評価

別離(2011年製作の映画)
3.8
しんどい…ひたすらにしんどい映画です。
でも観る価値は十二分にあります。

家族のためを思って国を出ることを決意した妻と、アルツハイマーの父の介護のために国に残りたい夫。
離婚するか否かで争ってたところに、お手伝いとして来ていた女性との間にトラブルが発生します。
まず、そこに至るまでに描かれる夫婦間の行き詰まり感と、お手伝いできてくれてる女性の家庭の苦しさとが本当にしんどい。
そして、トラブルを通して浮き彫りになる各々のプライドや余裕のなさが更にそのしんどさに拍車をかけます。
どこかのタイミングで両者ともに選択を間違えてしまって、どんどんと後戻りできない展開になっていきます。
その間も交わされるイライラを募らせた会話が精神的にキツくなってきて…それでも何とか観続けたけど、最終的に得たものって何もないし、何かを失ったか?と言われるとそういうわけでもない。つまり、あんだけ精神すり減らしたのに、トラブルが起こる前と何も現状は変わらないんです。
その事実が一番しんどい。
お互いに苦しい生活や辛い環境の中で、自分を含めた家族を守るために奔走したはずなのに、結局は「憎しみ」「恨み」という負の感情を残したっていうだけ。
子供同士の交流を描いた後に、苦しむ母を見て忌々しげに睨む女の子の表情があまりにも印象的でした。
「大切なものを傷つけられた」という事実の大きさを知ると共に、不必要に負の感情を生み出してしまうしんどさも知りました。

イランの作品なんですけど、構成とか描き方とかはヨーロッパ寄りなのかなと思いました。
会話一貫で進む展開と、みんながイライラしていて…っていう描写がヨーロッパっぽいなぁと。
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