別離の作品情報・感想・評価

「別離」に投稿された感想・評価

亘

亘の感想・評価

4.6
政情不安定なイラン。娘の将来を考えシミンは国外への移住を考えるが、夫ナデルは父親の介護を理由に移住に反対する。シミンは家を出るがその間義父の介護士が流産する事件が起こる。夫ナデルが殺人罪に問われたが、その後状況が二転三転する。

一つの流産事件をめぐるサスペンスでありながらイランの抱える失業問題や宗教問題、夫婦の問題などを描いた作品。例えばアメリカが舞台だったら単に派手な離婚劇・法廷劇を繰り広げて終わるかもしれない。それでもイランでは、宗教をベースに考え方が日本とか欧米とは違っていて人々がどこかリミッターを設けているような気がする。とはいえ宗教を介して利己心は比較的制御されていて、見苦しい争いは防止されているように見える。

皆が誰か他者を想っているからこそ、誰一人決定的な悪人がいない。それが今作の問題を複雑にしている点。皆誰かを想っていて自分が正しいと考えているけど、子供たちの純粋な目から鋭い指摘が入って自らの中の悪に気付く。シミンの家出が悪いようだけどそれは娘を想ってこそだし、容疑者ナデルは父のことを想っている。ラジエーも娘のことを想ってるし、その夫は妻のことを助けようとしている。誰かを想うあまり互いに傷つけあって後戻りできない状況に陥ってしまう。

中盤まで容疑者:ナデル、被害者:ラジエーで激しく張り合う状況だったのに終盤突然状況が変わる。一時ナデル不利になるかと思いきやラジエーがシミンに告白をする。ラジエーの告白は、背景にイスラム社会での女性の弱さがあるようで、イランの抱える問題を映している。誰も完全には救われない状況でも自分の想う相手のために争い傷つけ合う姿は健気であるとともにどこか虚しかった。ラストシーン、両親を傷つけたくないテルメーの健気な姿と争いで疲弊し別離する夫婦の姿は対照的だった。

印象に残ったシーン:シミンとナデルが娘について喧嘩するシーン。ラジエーがシミンに告白するシーン。ラジエーが誓いを拒むシーン。夫婦が別離するラストシーン。
lion

lionの感想・評価

2.5
イラン?映画。
夫婦の仲が事件を境に完全に引き裂かれる。
文化はよくわかるが内容はいまいち
劇場公開以来の、再見。これぞ、映画。誰も悪いひとはいない。介護が必要な父を庇う夫と、娘を庇う妻。かたや、妻を庇う夫と、亡くなった娘を庇う妻。みな、愛のために動いているだけだ。だけれどそれゆえに、起きてしまう、別離。生涯見続けるであろう作品ですね
ゆみ

ゆみの感想・評価

4.0
最初のコピー機のところ、面白い!浮かんでは消え、浮かんでは消え。

気性や宗教感の違いはあれどもどこへ行っても同じ、小さな嘘をつき、意地をはり、少しずつ理想から離れていく私たちの現実。

私たちは弱い。弱いから「これだけ」と決めた存在のために汚い切り札をきる。結果それが一番守りたい人を傷つけることになってしまうのに、それを止める事ができない、、、最後のエンドロールの長回し、最後まで見入ってしまった!
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〖別離〗
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この辺のアジア映画はつねに社会情勢からのメッセージを孕んでいて宗教や世間に縛られた生活に疑問が生まれるとともに胸が痛くなるんですが

これ傑作!
どこのどの人が撮ったの?傑作!

小さなボタンのかけ違いから生まれる不条理。
愛するゆえに傷つけるし、守りたいがために壊れていく。不器用で縛られた大人たちが小さな箱の中で懸命にもがいているみたい。

最新作「セールスマン」とストーリーは全く異なるけれど、そこに流れる不協和音は全く同じだ。
とくに、「セールスマン」では二重奏くらいだったのが、こちらは四重奏くらいにいろんな視点からの軋んだハーモニーが重なっている。

主人公たちが離婚する・しないの論からはじまり、起こってしまった不慮の事故。絞られる争点は、話が進むにつれてズレていく。
夫は彼女の妊娠を知っていたのか。
倒れたのは押されたからなのか。
そもそも原因はその時に起こったのか。
そこに絡みつく自身の宗教観、子どもの存在、妻に迫る期限。いろんな要素が、このシンプルなサスペンスに深みを持たせてくれる。

なんといってもテルメー、彼女は父親が嘘をつこうが犯罪者だろうが、母と仲良く三人でいられたらそれでよかった。だからこそ、判事の質問に答えたあとに涙する彼女をおもったら、この映画はだれにも感情移入せずに観ようと意気込んだ気持ちが揺らいでしまう 、くらいに切なかった。
でもこれはソマイェにも言えること。三人並んだテルメーらを見つめる彼女の視線、大人顔負け。

とにかくこの監督、どのショットも忠実で優等生といった印象。
家を出る時の急いだ妻が、閉められない旅行カバン。
車の往来と焦る女性のクロスカッティング。
倒れた際の現場検証を行うくだりのマッチカット。
そしてラストの、壁で仕切られた…ああ、結末に言及してしまうから、これは言わないでおこう。

よくよく見ると このポスター自体素晴らしい。
暗い影のほうで、顔を上げることも出来ない夫。
光が当たり前を見据えているものの、視線がズレている妻。
このふたりのショットに映画の中身が象徴されているところもなんだか優等生的。

いい役していた被害者側の夫の使い方や、ラストの言及しないところや、盗まれたお金についてうやむやになっているところも一見消化不良に思えるけれど、とても効果的なしめ方だとおもいます

だれもが悪いし だれもがかわいそう
だけどそういう見方だけで終わるのはとてももったいない映画…でした。
ミステリー仕立てとは思わなかった。「羅生門」的な話とは。娘のため、とどちらの家族もしきりに口に出すのに結果全く娘のためになってないっていう。最後の娘同士が睨み合うシーンが苦しくなったなあ。
Gatt

Gattの感想・評価

4.4
再見。初回の衝撃は本当に凄まじかった。本当に画面に惹きつけられて見守った。
離婚、養育、介護、失業という内容を含みながら、嘘と真実、敬虔さを重ねてくる。リアルで緊張感が漂う。名作。
1950720

1950720の感想・評価

4.6
世界の映画祭で受賞も多く評価も高いという観る前の期待を、遥かに上回る完成度にまず驚いた。ものすごい見応え。

宗教観に強弱はあるものの、ジェンダー、経済格差、介護はどこにでもある問題。そして登場人物の細部にわたる描写と脚本に唸った。人としてのプライドと偏狭さ、家族のありかた、倫理観や正義感という国や人種を超えた機微は共感を呼び、それを老人から子役に至るまで出演した俳優たちの素晴らしい演技が支えている。

楽しそうに抱き合い満面の笑顔で遊んでいた2人の少女テルメーとソマイェ。なのにラスト近くでの互いを見るまなざしには胸が詰まった。

最後の瞬間まで惹きつけて離さない物語性、そしてラストをあの形で締めくくった才能。間をおかずアスガー・ファルハディ監督作を観たくなる、そんな映画だった。
mikoyan358

mikoyan358の感想・評価

3.0
2014/6/21鑑賞(鑑賞メーターより転載)
海外移住をめぐっての夫婦の亀裂、それに雇ったヘルパーを突き飛ばし流産させた?という事件が折り重なって、2時間あまりただひたすらに繰り返される口論また口論。誰しもが正しいことを言いつつ、自分を守るために小さな嘘をつき、それが折り重なってさらに相手との溝を広げる...とにかく救いようが何一つないが、そのマイナスだけで最後まで目を離させないパワーもまた凄い。イスラム教の価値観と社会の閉塞感がイランをこうさせてしまうのだろうか?といっても部外者だからこその違和感で、彼らには至極当たり前のことなのかもしれない。
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