ウゴ

聖処女のウゴのレビュー・感想・評価

聖処女(1943年製作の映画)
5.0
「信仰するものにとって、神の説明は不要であり、信仰しないものにとって、神の説明は不可能である。」
本作は1943年に公開され、アカデミー賞とゴールデングローブ賞を受賞した作品である。その内容は、ベルナデッタ・スビルーという、実在した聖女の伝奇となっている。
なのでキリスト教徒でない自分は、「あー、はいはい。キリストとキリスト教徒マンセー映画ね」と思って大して期待せずに本作を鑑賞し始めたのだが、嬉しいことに予想に反してとても面白かった。
映画の冒頭に、まず上記に書いた言葉が観客に提示される。この部分で既に、本作が単なるキリスト賛美の映画でない事が分かるし、実際に作中でもこの言葉を放つ人物が登場する。
作中に登場する主人公のベルナデッタと、学の無い村民達、修道女達は神秘の存在を疑わない。それに反して、知識人達は神秘の存在に懐疑的である。この対比が面白い。
ベルナデッタは聖女を見たと主張するが、本当に聖女はいたのか?それとも、鬱屈とした日常をおくっている内に、彼女自身が生み出した幻想に過ぎないのか?その解答は映画の中では示されない。判断は観客の手に委ねられているのである。
一つだけ確かな事は、すがるものが無くても生きていける人間などいないという事だ。信仰する対象が科学であっても宗教であっても、そこに大した違いはない。しかしながら、両者の主義主張は決して相容れ無いのである。
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