Omizu

聖処女のOmizuのレビュー・感想・評価

聖処女(1943年製作の映画)
3.8
【第16回アカデミー賞 主演女優賞他全4部門受賞】
フランツ・ヴェルフェルの「ベルナデットの歌」を原作に、『慕情』ヘンリー・キングが映画化した作品。アカデミー賞では作品賞をはじめ最多の12部門で候補にあがり、主演女優賞など最多4部門で受賞した。

有名なルルドの泉をめぐる実話であり、ジェニファー・ジョーンズの可憐な見た目が話題になった作品として興味はあった。「信じる者は救われる」という系統の話ではあるが、実に流麗で品格のある演出が全体を彩っている。

奇跡をなかなか認めようとしない大人たちと毅然と立ち向かうベルナデット、その純粋さがなんと違うことか。

白い貴婦人としか言っておらず、聖母マリアだと言ったのは周りの人。それ故に冒涜した!と責めることもできない。正直を突き通すことで突破できることもあるんだなあ。

ベルナデットの奇跡、彼女の家族、淡い恋心と流れるような手つきで上品に語っていくのが素晴らしい。ベルナデットだけでなく映像からも清らかさが感じられる。

ジェニファー・ジョーンズは難しいバランスでベルナデットを演じている。ともすれば精神薄弱、ただ強情なだけにみえてしまうところを回避し、純粋さの権化のような佇まいで終始貫く。これはかなり難しい役だと思う。

終盤は奇しくも名前の似ている『ベネデッタ』と展開が似ていた。懐疑的な老年のシスターが奇跡の女性をいじめる。しかしやはりその後は正反対。

ベルナデットは本当に貴婦人をみていたのか。キリスト教信者ではない私からすると懐疑的。ルルドの泉によって治った患者たちというのも具体的に調べてみないと分からない。

ベルナデットは虚弱体質で学校でもバカにされる。その描写を序盤に入れることで全面的に肯定することは避けているように思う。つまり彼女はやはり自分に注意を引こうとでっちあげたのではないかということは否定できない。

それを言うと長くなるのでここまでにするが、とにかく全面的に肯定するわけではないフェアなつくりにちゃんとなっているように思う。

あとはやはりジェニファー・ジョーンズの存在感ですよね。彼女は初主演にしてスターに駆け上がったというがそれも納得の清純さあふれる美貌。

美術や衣装、撮影など全てがハイレベルにあり、品格を感じさせるプロダクションのレベルの高さはスゴい。少し長いが気にならないほど面白い。名作。
Omizu

Omizu