松浦義英

極私的エロス 恋歌1974の松浦義英のレビュー・感想・評価

極私的エロス 恋歌1974(1974年製作の映画)
3.0
初の元町映画館。
初の原一男作品。

子供作ったけれど、女が勝手に出ていってそのうちひょっこり沖縄から連絡よこしてきたので未練たらたら追いかけた。
そんな作品。
少しは監督に共感しそうだなあと思って見始めた。

ドキュメンタリー映画っていったってそこまでドキュメンタリー映画じゃなくて普通の映画と思っていたから…めちゃくちゃドキュメンタリーでビックリした。
時代背景もあって音声も聞き取りにくく、英語字幕を追いかけてたよ(笑)
日本語音声を聞きながら英語字幕で脳内補完する…逆転してて面白い体験だった。

主演の武田美由紀の性格・見た目は、勝ち気な生意気な女。
子供の事を『ガキ』と形容したり、子供になってほしい性格について「安定とかいらないからもっとギラギラしてほしい」そんな感じの攻撃性を持った子供を渇望していたり。
苦手な部類の人だから見るのはムカついたし疲れたけど、そういう性格は見せかけなんじゃないかと思った。

自分で何もかも切り拓いていかないと前が見えない時代背景の閉塞感ってのもあるし、舞台が沖縄だしね。
女の喧嘩シーンでは「男と女は喧嘩してもセックスすればいいけど、女と女じゃセックス出来ないもんね」とどこか儚げな顔だしさ。

男との(監督と?ハメ撮りってやつ?)
セックスシーンは顔だけ写してるけど、やっぱり女性が一番美しく?妖しく?映る瞬間だと思う。
惚れ惚れしちゃったもんね。

黒人兵士の子供を世話して、でも色々あって手放して、でも気になって行方を探してまた世話しようとするのは母性ってやつなんだろうな。
これがあることで育児や世界を舐めてるような攻撃的な態度が中和されてるなと。
実際はそれが本当の思いなんじゃないかと思えてくる。

あそこまでガッツリ自力出産シーンを見せられると思ってなくて驚いた。
破水しまくりだわ、産婆つけてないわ、監督はビビってるわという。
ピンボケは偶然の産物らしいけど、タイミング良すぎてビックリした。
なんか自分が父親になった感を強制的に背負わされてる感じがこちら側は凄かった。
子宮から子供出てくる所、胎盤出す所。
ピンぼけさせつつ全部見せるのは凄い。
…高校の授業で「古いアダルトビデオかよ」レベルのモザイクを施した出産映像をカラーで見たけど、こちらのモノクロ映像の方が断然教材になるなと。
…ピンボケだから、一応見えてるから教材にはならんか…?(笑)

出産前と出産後で当然だけど全然お腹の膨らみが違ってビックリしたわ。
…出産シーンは凄く美由紀さん落ち着いてたように見えた。最後まで赤ん坊の事気にかけてたし。
そうかと思えば赤ん坊をお風呂に入れて、ニコニコ。
こちらまで癒やされた。
あれが女の本能的な強さなのかなと。

当たり前だけど、出産している女性は結婚してないからガッツリ見た事ないわけですよ。
その手前までは見た事もやった事も勿論あるけども。
だから、凄いものを見てる感が凄かった。
それを映画で、沖縄で、不特定多数に見せる武田美由紀の覚悟たるや。
凄いものがあったんだなあとフィルムから感じる。
でも武田美由紀と小林佐智子の出産シーンの撮り方が全然違うのは…元カノと今カノだから?

出産後は認定保育園みたいな活動をする。
なんかそこでは子供のためにお金を稼がないとって感じの母の顔になっててこれまたビックリ。

女って強いんだなあ、男って弱いんだなあ。
そんな映画だった。

ラストの船のシーン、赤ん坊が落ちないかヒヤヒヤしたよ(笑)
そしてエンドロールの音楽が加藤登紀子でまたビックリ(笑)
あ、小林佐智子さんは今の時代でもめっちゃ可愛いと思う(笑)
原監督うらやましい(笑)
松浦義英

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