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U2/魂の叫びのWILDatHEARTのレビュー・感想・評価

U2/魂の叫び(1988年製作の映画)
3.3
『「SING/シング:ネクストステージ」の予習編』


まさかボノが声優としてライオンを演じ、この映画の中でプレイされる曲が(2曲も!)アニメ映画で唄われる日が来る等とは当時映画館で本作を観ていたU2の一ファンだった自分は夢想だにしなかったのである。

特にその内の1曲「Where the Streets Have No Name」はそれまでモノトーンだった白黒画面が一転カラーフィルムとなり、アイルランド出身のロックバンドがアメリカを制覇してゆく瞬間を描くこの映画を象徴する高揚感たっぷりの鳥肌シーンであり一見の価値がある。



さて、時局に鑑みると本作で演奏される曲の一つである「Sunday Bloody Sunday」に触れない訳にはいかないだろう。

この曲のモチーフとなった「血の日曜日事件」は1972年1月30日北アイルランドのロンドンデリーでイギリスからの分離とアイルランドへの統合を求めていたカトリック系住民のデモ隊にイギリス軍が発砲し13人が死亡した事件である。
この事件発生から今年は50年にあたり、先日追悼集会が行われたとのこと。

そして1987年11月8日、日曜日。北アイルランドのエニスキレンでIRAによる爆弾テロが発生し11人が死亡。
この日ちょうど本作に収められているアメリカツアーの最中だったU2。アイルランド出身者としてボノがこの事件について触れた後「Sunday Bloody Sunday」をプレイする模様が本作に記録されている。


また、北アイルランド紛争にまつわる映画と言えば現在公開中の「ベルファスト」。監督ケネス・ブラナーがどんな思いでこの争いを見つめ少年時代を過ごしたのか、映画館にて確かめてこようと思う。



この映画の冒頭でボノは「チャールズ・マンソンがビートルズから盗み取った曲を俺たちが奪い返したんだ」と述懐し「Helter Skelter」を歌う。
ボノの思いに賛同する。
僕は暴力もまた決して人間から切り離すことの出来ない本質であると考えてはいるが、音楽をはじめとする著作が、暴力を正当化する大義として利用されていた事実には異議を唱える姿勢を持ち続けたい。

↓「Sunday Bloody Sunday」/ U2
https://youtu.be/uMFzYhCtZaY
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