ケロケロみん

一命のケロケロみんのレビュー・感想・評価

一命(2011年製作の映画)
4.0
井伊の赤揃え!
滝口康彦の短編小説「異聞浪人記」の2度目の映画化。「拝領妻始末」という武家社会の非人間性を描いた短編集の中の一編。
1630年代の日本は戦国時代が終わり戦争屋さんだった浪人は用がなくなり江戸に集まった。更に徳川幕府は徹底した対抗勢力となり得る大名をあらゆる手段で改易・減封する政略をとったため、主家の廃絶によって路頭に迷う浪人の数は夥しくその大部分が職を求め江戸に集まりだした。
そんな中諸大名の屋敷に押しかけて腹を切るから玄関先を貸してくれという狂言切腹、今でいう「腹切る切る詐欺」が浪人の中で流行。最初の1人は確かに本気で切腹しようとしたらしい。しかし後に続いた者たちは単に「玄関先で切腹されたらかなわない、どっかいってくれ」と渡されるお金目当てのたかりのようだった。そんな中、1人の浪人が井伊掃部頭直孝の屋敷の玄関先に現れた。井伊家は大坂夏の陣で数々の勇将を討ち取った体育会系大名、その朱色に塗られた甲冑他一式を「赤揃え」と呼び恐れられた軍勢、狂言切腹など許すまじと手ぐすね引いて待っていた…
赤揃えの一式の暗い赤が闇の中で不気味な影を作り、赤と黒を基調とした調度品など屋敷の重厚さが素晴らしい。小説と変わらない口調のセリフの重々しさに加えて繊細なエピソードを加えて武士の哀しい運命を丁寧に描いている。そこで更に派手な殺陣シーン。公開当時見逃してましたが久しぶりに三池監督の良さがいっぱいで、食い入るように見ました。