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ティファニーで朝食をのodyssのレビュー・感想・評価

ティファニーで朝食を(1961年製作の映画)
2.0
【ヘプバーン主演作としては駄作】

30年ほど前にどこかの名画座で見たあと長いブランクがあり、久しぶりにDVDで再鑑賞しました。

前に見たときもあまり面白くないなと思ったんですが、今回もダメでした。前回と違うのは、この間に原作の小説を読んでみたこと。原作が映画化に向いていないということが大きいんじゃないでしょうか。

原作ではヒロインのホリーは、よく言えば固定観念に囚われない自由な、悪く言えばわがままで気まぐれではちゃめちゃな女。そこに惹かれて、語り手の作家や色々な男たちが彼女の周りに集まってきます。

ホリーは複数の男に好意を持つけれど、一人の男に束縛されるのはまっぴらだと思っている。彼女は原作でも猫を飼っていますけど、猫みたいな女なんですよね。かつての夫が彼女を迎えに来たとき、「野生の動物を飼っちゃいけない」と言いますけど、これは彼女自身のことなんですよ。

だから、あくまでヒロインは定型のラブストーリーに収まらない女なんだし、そこをハズしたら原作とは違う作品になってしまう。いや、違っても映画作品としてまとまりがあればいいんですが、原作のヒロインの奔放さをそのまま残して、でも無理矢理に男女のラブストーリーにして映画的な結末に持って行こうとしたから、破綻しちゃっているんですよね。原作ではヒロインは最後に行方不明になってしまうのだし、それは設定からして必然なんです。

あと、オードリー・ヘプバーンはこの役に向いていないと思いますね。もともと、この作品のヒロインは魅力的ではあるけれど、野性味というか色んな男からお金をもらうことを何とも思わない蓮っ葉さみたいなものがある。そういうところが物珍しくて男が集まってくるわけだけど、ヘプバーンには蓮っ葉な感じがない。彼女の主演作としては駄作になったのも、映画化に向かない原作であることの他に、ミスキャストが大きな原因ではないでしょうか。
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