BOB

ラヴソングのBOBのレビュー・感想・評価

ラヴソング(1996年製作の映画)
4.0
マギー・チャン×レオン・ライ。香港ラブストーリーの名匠ピーター・チャン監督の代表作。

婚約者を残して天津から香港に出稼ぎに来た青年が、広州出身のマクドナルド店員と恋に落ちる。

"甜密密"♪「夢の中であなたと会った」

めちゃくちゃ感動してしまったじゃねぇか、バカヤロー!!笑。ベタと言えばベタだし、後半にかけてご都合主義的な展開がなかったとは言えないが、それらを遥かに上回る魅力が詰まっていた。90年代香港映画の魔法に掛けられた。

誰もが忘れられない一曲を持っている。原題にもなっているテレサ・テンの名曲"甜密密"♪をモチーフにした、中国大陸から単身香港へ渡った一組の男女による10年間のラヴ・ストーリー。

甘くて切ない若い男女の純愛物語というだけでなく、返還前の香港を舞台とした移民の物語にもなっている点が大きな肝。言葉も通じず、知り合いも少ない異国の地へやってきた男女が、孤独に耐えかねて親密になっていくという流れは十分理解できたし、時代の波に飲まれながらも何とか成功しようと奮闘する姿には自然と感情移入できた。登場人物たちの実在感や生活ぶり、80年代香港を纏う空気感、雑多な街の風景などに一貫してリアリティがあったことも◎。

マギー・チャンの魅力が爆発している。純朴で勤勉な青年を演じたレオン・ライも輝いている。二人の相性も抜群。

ピーター・チャン監督の丁寧で情緒的な演出に何度もやられた。なるほどそうだったのかという気付きと共に、温かく爽やかな余韻を残すラストシーンまで抜かりない。

要所要所で使われる"アジアの歌姫"テレサ・テンの曲が、情緒的なムードを盛り立て涙を誘う。テレサ・テンの伸びやかで透き通るような歌声と、二人の心情を的確に捉えた歌詞が尽く心の琴線に触れた。ロマンチックなムードを演出するだけでなく、移民たちの郷愁を掻き立てる役割も果たしている所が素晴らしい。

より良い暮らしを求めて、中国本土から香港へ、香港から海外へ。返還前の香港という舞台・時代設定が、香港〜ニューヨークまで続く二人の恋愛に深みと現実味をもたらしている。テレサ・テンの曲を聴くのは大陸の人。北京語、広東語、英語。

ヤクザ役に『インファナル・アフェア』のエリック・ツァン。背中に彫られたミッキー・マウスのタトゥーが、見掛けによらずで、可愛いらしい。ウォン・カーウァイ作品で知られる名カメラマン、クリストファー・ドイルが、英語教師役で出演しているのも見逃せない。

『慕情』ウィリアム・ホールデン。

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