MasaichiYaguchi

森の学校のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

森の学校(2002年製作の映画)
4.0
河合雅雄さんの「少年動物誌」を基に、西垣吉春監督が当時子役だった三浦春馬さん、神崎愛さん、篠田三郎さんを主要キャストで映画化した2002年製作の本作を観ていると、私が子供時代には未だあった日本の風景や人々の営みが映し出されていてノスタルジーに浸ってしまう。
昭和10年代の丹波篠山を舞台に、病弱な少年・河合雅雄が豊かな自然に囲まれ、家族や友人達と触れ合っていく中での成長を叙情的に描いていく。
子役時代の三浦春馬さんの演技を初めて見たので新鮮だったが、神崎愛さんや篠田三郎さんを相手に出ずっぱり状態にも拘らず演じ切っていて、やはり「栴壇は双葉より芳し」なのだと感じた。
原作の題名から分かるように主人公の雅雄は動物や昆虫が好きで、映画内でも様々な動物や昆虫が登場する。
それらとの触れ合いが、病弱で満足に学校に行けない、だから勉強も遅れるという劣等感に苛まれた雅雄の心を癒す。
更に映画では雅雄を中心な虫取りや魚取り、対立するガキ大将をはじめとした子供達との喧嘩も描かれていたりして、私を含めて昭和世代はその光景に懐かしさを覚えてしまうと思う。
そして東京からやって来た少女との淡い初恋の様なシークエンスもあったりして甘酸っぱい気分になる。
終盤で、病弱な雅雄を常に気に掛けてくれていた人物との別れが描かれるが、そこでの「お疲れ様でした、そして本当にありがとう」という台詞が心に残る。
本作を観ていると、改めて失ったもの、その様々な喪失に対する切なさが胸に込み上げてきます。