カタパルトスープレックス

好色一代男のカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

好色一代男(1961年製作の映画)
1.5
猿も木から落ちる。大天才の大失敗です。

生きる意味を日本的で情緒的な「関係」ではなく、「個人の意志」に見出し、テーマとして描き続けた増村保造監督。井原西鶴の原作を脚本家の白坂依志夫がアレンジしました。主人公の世之助を演じるのは市川雷蔵です。市川雷蔵は「眠狂四郎」シリーズなどクールでニヒルなイメージがありますが、本作ではコミカルな役柄です。

市川雷蔵演じる世之助は「女を幸せにする」が生きがいで、全国津々浦々の女性を幸せにしようと躍起になります。そのために、親も犠牲にしますし、幕府にも楯突きます。コミカルではありますが、増村保造監督が理想とする「個人の意思を貫く」キャラクターです。ただ、その貫き方が感心しません。だって、「女の幸せにする」原資は親が倹約して稼いだお金なんですから。結局のところ、親に依存している。「関係」に抗うのではなく、寄生している。単なるドラ息子の我儘ですよ。自分を貫くなら、自分の力でやらないと。

親に勘当されていた期間もありましたが、力があまりないためにさほど女性を幸せにできませんし。色々とカッコいいことを言いますが、すべて空虚に響いてしまいます。はっきり言って幸せの押し売り。幸せにした(と思っている)女性の髪のコレクションも最悪に趣味が悪いです。むしろ、世之助が自己満足のだめだけに女性を食い物にしている感もあります。

若尾文子演じる夕霧だって、幸せのはずがないですよ。単なる世之助の自己満足ですよ、親の金を使った。どう考えてもバッドエンドしか想像できない。バカじゃなかろうか。幸せにするならちゃんと幸せにしろ、自分の力で。

天才増村保造監督でも空滑りして駄作を作ってしまうこともありますよね。